暗号資産取引計画の作成方法
市場取引には、しっかりとした綿密な取引計画を立てることが不可欠です。それは、取引の成功を左右する可能性がある一方、トレンドに流されたり、重要な情報を織り込むのを忘れたり、取引をしなかったことを後で後悔したりすることにつながる可能性もあります。効果的な取引計画を作成するには、取引スタイル、リスク許容度、適切な市場の動き、エントリーレベルとエグジットレベル、取引スプレッドを考慮する必要があります。自身のトレーダーとしてのあり方を定め、取引方法のロードマップを提供するものです。
デイトレード、スイングトレード、市場の空売り、デリバティブ取引のいずれを行う場合でも、効果的な取引を特定し、障害なくそれを活用するには、取引計画を立てることが不可欠です。
情報通トレーダーにとって重要な戦略的フレームワークのメリットを網羅しながら、暗号資産取引計画を策定する方法を、順番に説明していきます。
取引計画とは?
暗号資産取引計画は、取引テクニック、取引戦略、取引手法を論理的なフレームワークにまとめた取引の設計図です。このフレームワークにより、取引の実行可能性を簡単に評価し、ご自身の得意な取引方法に常に集中することができます。
取引計画は、リスク、市場の注力分野、分析、戦略的手法の地図です。どんなトレーダーでも、確信を持って暗号資産市場取引を行うために、計画が必要です。成功実績のある取引テクニック、パターン、戦略は無数にありますが、それぞれのトレーダーの考え方、専門知識、経験に最適なものはほんのわずかです。取引計画により取引に集中し、モチベーションを維持し、適切な取引から目標が逸れないようにすることができます。
暗号資産の取引計画は、綿密な調査と念入りな事前計画の賜物です。暗号資産取引計画を一度作成したら、問題が発生するたびに変更するべきではありません。取引計画が変更されるのは、トレーダーがより良い取引方法を見つけた場合のみです。それには、広範な検証を行い、繰り返し成功した取引を記録する必要があります。
取引計画を立てるメリット
取引計画は、トレーダーが取引に集中しやすくなる様々なメリットがあります。リスクの軽減から恐怖の解消、貪欲の制御まで、優れた暗号資産取引計画は成功を保証するものではないかもしれませんが、成功を確実に後押しします。独自のアプローチに基づいて暗号資産取引計画を策定することの主なメリットを以下にまとめます。
パフォーマンスを正確にモニタリングできる
取引計画により、市場への関与を取引戦略に合わせて調整できます。測定結果を得るために制御された環境を整備することができます。これにより、より高い取引成果を目指すために調整を加えながら、取引のパフォーマンスと目標を追跡することができます。
優れた計画とは、すべての取引ポジションを記録し、戦略の詳細をまとめたものです。この詳細には、使用されるテクニカル分析の種類や、まとめられた各取引に関連するファンダメンタルズ分析が含まれる場合もあります。このようにして、アプローチを改善し、収益を上げられる取引にエントリーおよびエグジットしやすくなります。
経営理論家兼インフルエンサーのピーター・ドラッカー氏は、「測定できなければ改善できない」と話していたと言われています。
取引への感情移入を防止する
暗号資産取引計画を利用すると、準備ができていない取引に伴う大きなストレスを軽減することができます。取引計画を作成したら、価格変動を客観的に分析するために必要な手順を実行できるようになります。
そして、ハイリスク取引を促進する一般要因である貪欲さを払拭できます。これにより、感情的になったり、焦ったりせず、無関係な情報に気を取られることもなく、自信を持ってポジションを建てることができます。
市場が激しく変動し、情報が次々と発生する中、暗号資産市場は大きく影響を受けます。そのような状況では、市場センチメントに飲み込まれ、取引のビジョンを見失いがちです。これにより衝動的に意思決定をしてしまう可能性もあります。事前に計画を作成することで、入念な戦略から逸脱しないようにするために、集中すべき事が分かります。
元ピッツバーグ・スティーラーズのコーチ、チャック・ノール氏は、「プレッシャーとは、自分が何をしているのかわからないときにのみ感じるものだ」と言いました。
規律ある取引により、より有効な洞察を得られる
信頼できる取引戦略とは必ず、成功を予測するために、利用前に検証と調整が必要です。検証では規律ある取引を行い、有望なパターンや指標を繰り返し、同様の市状に何度も参入する必要があります。試行錯誤し、取引日誌を慎重に評価しなければ、どの戦略が最適であるかを知ることができません。
組織的な市場調査
明確に定義された取引戦略を策定するには、包括的な市場調査を行う必要があります。継続的に取引が行われている市場では、市場の動きを止めて分析する時間はほとんどありません。ファンダメンタル分析によって得られる絶え間ない情報の流れを考慮に入れるだけでなく、取引パターン、スリッページ、リスクも分析することになります。
体系的に調査を進めるには、事前に具体的な取引計画を立てることが不可欠です。取引計画には、取引の実行可能性を評価するために使用するすべての要素を組み込んでください。これには、市場調査基準、報道機関、その他の優先指標が含まれます。
責任あるリスク管理
取引計画を作成することで、過剰取引を防ぐことができます。取引で完全に損失を回避できる方法はありません。ただし、取引ごとのリスクを管理することで、簡単にポートフォリオの損失の急増を防ぐことができます。高い確信による取引において、この規律を保つことは難しいかもしれません。毎回適切なタイミングを計ることは難しいでしょう。
固定されたリスクと報酬の比率に従う場合も、合理的な値切り価格に従う場合も、また取引を取引資本の一定の割合に制限する場合も、リスク管理の方針を定めることで、責任ある取引を行うことができます。
取引すべきでない場合を知ることができる
あらかじめ決められた取引計画に従うことで、不適切なタイミングでの取引を防ぐことができます。市場に機会が少ないときに衝動的に取引をすると、日々積み上げてきた収益が、すぐに失われてしまいます。
取引計画で取引範囲を設定することで、パターンや取引機会の分析に時間を割くことができます。皆様の目標は、時間とお金を無駄にするのではなく、洞察に裏付けられた統計的優位性があると分かった時に取引することです。
取引計画の作成方法
以下で、収益を上げる可能性を最大限に高める暗号資産取引計画の作成方法を順番に説明していきます。
ステップ1:目標、アプローチ、取引に利用できる時間を調整する
取引目標を設定します。そうすれば、トレーダーとしての経験を積む過程で収めていく成功はすべて、モチベーションの向上と、学習に役立ちます。固定された現実的な期間を定め、達成可能な目標を形成します。24時間取引が行われる市場では、取引ボットを使用しない限り、追跡に最も適した取引時間帯を選択しなければならない場合もあります。
ご自身のスケジュールを確認し、集中できる時間数に基づいて毎日の取引時間帯を決めましょう。取引スタイルによっては、長い取引時間を必要とするため、選択肢と利用可能性を慎重に比較検討してください。
ステップ2:取引日誌を作成する
初日から、エントリーポジションとエグジットポジションを取引日誌に記入し始めましょう。オンライン(クラウド)に保存されたスプレッドシートを使用すると、すべてのデバイスから取引履歴にアクセスでき、安全なバックアップを作成して、データが失われないようにすることができます。
必要に応じて、後で学習するために重要な取引のスクリーンショットを撮ります。取引日誌にも記録しておきましょう。暗号資産の取引活動を記録することは、様々な取引戦略を確実に検証するための最適な方法です。また、アプローチを調整した場合の効果を測定することもできます。
ステップ3:自分に最適なアナリティクスを判断する
市場に関して最適な洞察を得ることができる種類の分析を見つけ、その分析を継続しましょう。オンチェーン指標、取引数、アクティブアドレス、さらには信頼できる報道機関からの予測可能な社会経済的要因などの比較分析を使用します。ご自身とって効果的な方法論を紙やパソコンにメモし、常に自分の強みを磨き続けましょう。経験豊富な暗号資産トレーダーの多くは、取引計画の一部としてファンダメンタルズ指標とテクニカル指標をスプレッドシートに記入して保管しています。この手法により、トレンドと成長を一目で簡単に評価することができます。
ステップ4:取引スタイルを指定する
様々な取引スタイルを試してみないと、どれが自分のアプローチや性格に最適かを判断するのは難しいかもしれません。すでに取引を試したことがある方なら、スキャルピング、デイトレード、レンジトレード、スイングトレード、ポジション取引、または取引所間裁定取引のどれが好きか、分かっているでしょう。
スカルピングでは一度に数秒から数分間、ポジションを保有します。デイトレーダーは1日以内に取引を行い、一晩ポジションを持ち越すことはめったにありません。スイングトレードではトレンドに従って数日から数週間の期間で取引ポジションを保有しますが、ポジショントレーダーは数週間、数ヶ月、または数年にわたって取引を保有します。
取引スタイルに関するメモには、取引中に蓄積した基本的な取引ルールも記載しましょう。取引に関する一般的なガイドラインを記録する たとえば、「リトレースメントの影響を受ける可能性があるため、上昇トレンドの銘柄を追い求めない」または「通貨に投資する前に、下降トレンドが完全に崩れるのを待つ」などです。場合によっては、ビットコインやイーサリアムなどの通貨の割合を基に、ポートフォリオをどの程度安定させたいかの判断を試みることもあるかもしれません。
ステップ5:保有期間を定義する
取引スタイルや戦略ごとに必要な保有期間は異なります。前述の通り、スカルピングでは一度に数秒から数分間、ポジションを保有しますが、スイングトレードでは数日から数週間、保持する場合もあります。保有期間が長くなると、多少不安になるかもしれません。その場合は、保有期間が短い取引方法の方が好ましいでしょう。結局は取引方法次第です。
主に取引スタイルによって保有期間が決まります。よって、戦略とリスクを常に把握できるように、取引計画の期間を特定しましょう。
ステップ6:取引戦略の確立
ご自身の知識と経験に基づいて認識できるパターンに注目しましょう。少し時間をかけて練習すれば、RSI、ボリンジャーバンド、移動平均、フィボナッチリトレースメントなどの指標を見つけて利用できるようになります。ご自身が最も良く理解し信頼している取引パターンと指標を出発点として使用しますが、常に新しい方法論に出会うたびに学び、レパートリーを増やしていきましょう。
可能な限り詳細を交えて、各取引戦略の手順を列挙していきましょう。取引を成功させるためのエントリーとエグジットに必要な各ステップの決定版リストを作成しましょう。たとえば、取引戦略の手順では、暗号資産の現在の価格、選択した指標の取引トリガー、および希望するエントリーポイントとエグジットのタイミングを記録します。これは分単位の評価にも当てはまります。
ステップ7:リスク管理戦略を決定する
取引ごとにリスクを許容できるポートフォリオの割合を決めます。常にリスク許容額以下で投資額を決定する必要があります。しかし、多くのトレーダーは、リスクと報酬の比率により取引の価値を判断します。この場合、リスクと報酬の比率が1対5であるということは、10ドル相当のイーサリアムをリスクにさらすことで50ドルの収益が生まれる可能性があるということです。自分のリスク許容度に合った取引を判断し、暗号資産取引計画に書き留めてください。
取引計画に割り当てる独自のルールを作成します。たとえば以下のようなものが挙げられます。 同じ取引で3回を超える連続損失を回避する。取引で2、3日間損失が発生した場合は、取引予算を削減する。リスクにさらしても構わないポートフォリオの価値に応じて、取引の損失を制限する損切価格を必ず設定する。
リスク許容度が主に取引限度額を決定します。しかし、損切価格として取引額の5から10%、またはポートフォリオ全体の1%などの割合を設定できます。最大損失率を設定することで、損失を確定することに気が進まない場合も従うべきルールを定めることができます。リスクテイクはトレーダーによって異なり、場合によっては市況にも左右されます。ポートフォリオの価値が10倍に増えた場合、自ずと取引限度額を増やす自信が生まれるかもしれません。
取引計画の実例
暗号資産トレーダーの取引計画は、各自のアプローチと戦略に合わせて独自にカスタマイズされます。このガイドの手順に従い、自分だけの暗号資産取引計画を作ってみてください。
以下の例のような取引計画を立てるために、以下の質問を自身に問いかけてみましょう。
暗号資産取引をしたい理由は?
短期、中期、長期の暗号資産取引の目標は何か?
どの取引スタイルで最も実績があるか、または最もよく理解しているスタイルはどれか?
取引に割ける時間はどれくらいか?
主要な取引設定はどのようなものか?
二次的な取引設定はどのようなものか?
自分の取引スタイルに適した保有期間はどれか?
どのテクニカル指標を知っていて利用しているか?
リスクを軽減するにはどのような手順に従えばよいか?
自分の取引をどこでどのように追跡するか?
以下で、このマニュアルに従って作成した実際の取引計画例を紹介します。
取引概要
取引目標:
短期 — スイングトレードとテクニカル指標の読み取りで十分な経験を積み、最長6ヶ月の期間でポートフォリオの価値を15%増やし、その後リスクを再評価する
中期 — モメンタム取引で十分な経験を積み、ポートフォリオの価値を40%増やし、暗号資産の先物取引を開始する
長期 — 先物取引に成功したら、取引ごとにリスクをポートフォリオ資本の3%に増やし、中期目標からさらに20%増やす
取引スタイル:スイングトレード
取引時間:午前8時~午前10時、午後3時~午後4時
主要な取引設定:モメンタム取引
ブレイクアウト戦略 —
移動平均を使用して、突然の上昇トレンドに転じることが予想される暗号資産(通貨またはトークン)を見つける
通貨またはトークンがレジスタンスラインのピボットポイントを突破したらすぐにポジションを建て、適切な損切価格を設定する
上昇トレンドに乗り、トレンドが勢いを失う前にポジションを決済する
二次的な取引設定:リトレースメント
保有期間:1~6日
暗号資産の選択基準:
100億ドル未満の中規模時価総額
ネットワーク価値対取引比率(NVT比率)が高い
相対取引高が高い(平均の少なくとも2倍)
暗号資産に関する速報
暗号資産のロードマップマイルストーンの進捗状況
テクニカル指標:
平均方向性指数
相対力指数(RSI)
移動平均収束拡散法(MACD)
単純移動平均クロスオーバー
ストキャスティクス
RSIとMACDで確認されたアセンディングトライアングルパターン
リスク管理:
各取引で取引資本の1%
1日あたりの損失は3回まで
リスク対報酬比率:1:4
おわりに
トレーダは、市場の変動が大きく、短期取引であってもすぐに収益を上げられる可能性があるため、暗号資産取引に魅力を感じる場合も多くあります。暗号資産取引は、便利な取引所もあり、比較的簡単に始められます。
暗号資産取引計画を利用して、潜在的な取引の実行可能性を評価しましょう。さらに多くのパターンや指標を学び、戦略を改善する方法を見つけたら、それを取引日誌で追跡して、ご自身が立てた計画で役立つか検討してください。計画を立てれば、暗号資産の世界の様々な魅力的な取引商品に気を取られないように集中することができます。
暗号資産取引計画をうまく利用するための鍵は、作成した取引フレームワークから逸れないことです。計画が役に立たなくなった場合は、調整したり拡張したりできます。意図的かつ論理的な変更ならば、計画は、随時、ある程度変更しても構いません。
ドワイト・アイゼンハワー元米国大統領は、「計画など無意味、計画こそがすべてだ」と述べました。計画は非常に重要ですが、戦略を計画するプロセスにより、取引に対して入念なアプローチを取ることができます。大金がかかっているときは、衝動や偶然に頼るのは禁物です。