Ripple USD(RLUSD):決済のために開発されたステーブルコイン
専門家は、ステーブルコインが国際決済などの金融に関する主要課題を解決する鍵であり、近い将来、多くの伝統的な法定通貨に取って代わる可能性があると考えています。Ripple USD(RLUSD)が開発された目的は、この転換において中心的な役割を担い、グローバルな取引と分散型金融(DeFi)の安定化と効率化に貢献することです。この記事では、Ripple USDの概要、仕組み、主な特徴、利用場面、そしてステーブルコイン市場全般に及ぼし得る影響について詳しく説明します。
この記事のポイント:
Ripple USD(RLUSD)は、米ドル建ての準備資産により裏付けられたステーブルコインで、国際送金やDeFiの分野で、効率的かつ低コストな解決策を提供することを目的として開発されました。
RLUSDは、XRP Ledgerおよびイーサリアムとの相互運用性をもつマルチチェーンフレームワークを採用し、迅速な取引と高い流動性を可能にします。また、規制当局の承認を取得しており、ステーブルコイン市場をリードする存在です。
RLUSDは大きな可能性を示しているものの、その成功は、Ripple社が自らのエコシステムを成長させ、競争が激しく、規制に左右される環境で普及を進められるかどうかにかかっています。
Ripple USDとは?
Ripple USDは、Ripple Network上で運用されるステーブルコインで、安定性確保のために米ドルと1対1の比率で価値が連動するように設計されています。Ripple USDは、米ドル建ての預金、米国短期国債、その他の現金同等物からなる準備資産の裏付けにより安定性が維持されている、安全で信頼性の高いデジタル通貨です。
Ripple USD提供の目的
Ripple社がRipple USDにおいて目指しているのは、日常的に利用できる、信頼性の高いデジタル通貨を提供し、仮想通貨(暗号資産)と金融業界の課題のいくつかを解決することです。
時間のかかる高コストの国際決済:手数料の高さと処理時間の長さのために、海外への送金に長い時間と高い費用がかかる場合があります。RLUSDによって、迅速、簡便、低コストの国際決済が可能になり、世界中の個人や企業がより良い資金送金手段を利用できるようになります。
ボラティリティ:仮想通貨は、通常の取引に使用するにはボラティリティが高すぎると考えられることが少なくありません。米ドルと連動しているRLUSDの価値は比較的安定しているため、決済と価値貯蔵機能の両方の点で信頼性の高い選択肢です。
不安定な取引環境:市場が変動しているときは、安定した資産で自分の投資を守ることが重要です。RLUSDは、主要な取引所で流動性が維持されているため円滑に取引とポートフォリオ管理を行え、信頼性の高いヘッジ手段として利用できます。
DeFiの利用が難しい:多くの人にとって、DeFiプラットフォームは簡単に利用できるものではありません。RLUSDでは、マルチチェーンフレームワークによって相互運用性が確保されており、XRP Ledgerやイーサリアム上でDeFiを活用し、レンディング、借入、イールドファーミングなどを容易に行えます。
高い商業決済コスト:クレジットカードなどの従来の決済方法には、高額な手数料がかかることがあり、事業者がそれを負担しなければなりません。RLUSDを利用することで、特に銀行インフラが不十分な地域や現地通貨が不安定な地域で、決済プロセスの合理化とコスト削減を図れます。
Ripple社は、2024年6月、主に機関投資家の国際取引の合理化を目的としてRLUSDを導入しました。ステーブルコインであるRLUSDのベータテストは、2024年8月からXRP Ledgerとイーサリアムのブロックチェーン上で行われ、12月にニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)から承認を受けたことが大きな節目となりました。規制当局からの承認は、Ripple社が厳格な基準を遵守し、RLUSDの信頼性を高め、利用者と投資家の双方から信頼を得るために責任を持って取り組んでいることを明確に示しています。
NYDFSの承認が得られたため、RLUSDはXRP Ledger(XRPL)とイーサリアムのブロックチェーンの両方でローンチされる予定です。RLUSDは、Uphold、Bitstamp、Bitso、MoonPay、Independent Reserve、CoinMENA、Bullishなどの取引所に上場される予定で、将来的には他のプラットフォームやDeFiプロトコルにも利用が拡大される計画です。Ripple社の金融機関との強力な協力関係という評判を踏まえ、RLUSDはテザー(USDT)やUSDCなどの確立されたステーブルコインに対して競争力のある存在になると見込まれています。
Ripple USDの仕組み
ステーブルコインであるRipple USD(RLUSD)は、効率的で信頼性の高い国際取引を可能にするために開発されました。すべてのRLUSDが米ドル建ての預金、米国短期国債、現金同等物によって完全に裏付けられており、米ドルと1対1の比率で価値が連動します。これにより、安全で予測可能な取引に必要な安定性を保つことができます。
RLUSDはERC-20トークンとしてXRP Ledgerとイーサリアムのブロックチェーン上で運用され、多様なウォレットやDeFiアプリケーションとの相互運用性が最大限に確保される予定です。取引はRipple社の分散型ネットワークを介して処理されます。このネットワークは独自のコンセンサスメカニズムを使用して、通常3秒~6秒以内という即時に近い決済時間を実現しています。従来のブロックチェーンシステムとは異なり、このプロセスはエネルギー集約型のマイニングに依拠しないため、より迅速で、より環境に配慮した決済処理が可能です。
RLUSDではスマートコントラクトの統合によりさらに機能が強化されており、金融取引の自動化が可能です。これにより、レンディングや借入からイールドファーミングまで、革新的なDeFi商品・サービスへの扉が開かれます。RLUSDには現在、企業パートナーとのベータテストが実施されており、正式なローンチに先立ち、高水準のセキュリティと効率性の実現に向けて厳しく検証されています。
Ripple社は透明性を重視しており、サードパーティによるRLUSDの準備資産の監査や定期的な進捗報告が導入されています。このような取り組みが、成長を続けるステーブルコイン市場におけるRLUSDの信頼性と汎用性を支えています。
Ripple USDの特徴
高い流動性
Ripple USD(RLUSD)は、大手中央集権型取引所(CEX)の主要通貨ペアについて高い流動性を維持しています。そのため、RLUSDには大きな価格変動が伴わず、売買は容易で、円滑で効率に取引を実行できます。
マルチチェーンフレームワークによる発行
RLUSDは、XRP Ledgerとイーサリアムという2つのブロックチェーンで発行されており、複数のエコシステムにわたる幅広い相互運用性を実現しています。このように2つのブロックチェーンで発行されているため、RLUSDは多様なプラットフォームやアプリケーションに簡単に統合でき、種々のネットワークでアクセスと利便性を向上できます。
即時決済
RLUSDを利用すると、世界中のどこにいても、ほぼ即時に最小限のコストで取引を決済できます。国際決済の手数料と処理時間が削減され、従来の銀行による仲介が不要になることで、プロセスのスピードとコスト効率が大幅に向上します。
プログラム可能な金融
RLUSDをスマートコントラクトに統合することで、金融取引の自動化が可能になり、効率性と利便性が高まります。これにより、DeFiエコシステム内での購入、オンランプ(法定通貨の仮想通貨への交換)、取引、その他の活動が容易に行えるようになります。このようにRLUSDによって金融取引管理が簡素化し、DeFiの利用体験が向上します。
Ripple Custody
Ripple Custodyはデジタル資産を安全に管理するための信頼性の高いプラットフォームで、すでに金融機関やイノベーターによって広く利用されています。機関投資家レベルのセキュリティと24時間365日体制の即時処理機能を兼ね備えており、資産の安全性を確保しつつ迅速かつ容易に取引を実行できます。高度なガバナンスフレームワークによって、操作の簡略化と既存のテクノロジーシステムへの円滑な統合が図られており、利用者にとって有益な追加サービスも提供します。
Ripple Custodyでは効率性の向上が重視されており、手動作業の自動化、バックオフィス業務の簡素化、資産管理の円滑化と迅速化を可能にします。また、プラットフォームは、サービスとしてのソフトウェア(SaaS)、顧客ホスト型モデル、ハイブリッドモデルなどの導入オプションにも柔軟に対応しているため、自身のニーズに合わせてカスタマイズできます。トークン化であれ、ステーブルコインの発行であれ、包括的資産管理であれ、Ripple Custodyは強力なデジタル資産戦略策定のための重要なツールになります。
Ripple Custodyは、Ripple USD(RLUSD)のセキュリティと完全性の管理において主要な役割を担います。Ripple Custodyによって、米ドル建ての預金、米国短期国債、その他の現金同等物などの原資産の安全な保管と透明性の高い管理が可能になり、RLUSDが効果的に機能するために必要な安定性が確保されます。
Ripple USDの利用場面
Ripple USDによって、仮想通貨エコシステムの種々の金融アプリケーションを簡便に利用できるようになります。以下では、RLUSDの主な利用場面をいくつかご紹介します。
国際決済:RLUSDの開発目的の1つは、信頼性が高くコスト効率の高い海外送金手段の提供を通じて国際決済の改善を図ることです。Ripple社の大規模なインフラを基盤とするRLUSDは、90カ国以上で決済に利用可能で、従来の銀行システムに比べて低コストで迅速な取引を実現します。
分散型ファイナンス(DeFi):RLUSDはDeFiアプリケーションの利用に最適であり、レンディング、借入、取引などを安定的に確実に実行できます。DeFiアプリケーションに統合することで流動性が向上し、より柔軟に金融取引が行えるようになります。
トークン化:RLUSDはトークン化のプロセスに対応しており、法定通貨を容易にデジタル資産に交換できます。これは、デジタル資産を利用したいけれども、仮想通貨に伴うことの多いボラティリティを回避したいと考える企業や個人にとって不可欠な機能です。
効率的なオンランプとオフランプ:仮想通貨は本質的にボラティリティが高いため、法定通貨と仮想通貨の交換の際にトレーダーや投資家は大きな損失を被るリスクを負います。RLUSDの利用により効率的なオンランプとオフランプ(仮想通貨の法定通貨への交換)が可能になり、大きな価格変動を伴うことなく資産を変換できる可能性が高まります。
少額決済:RLUSDを利用すれば少額の取引を効率的に行えるので、少額決済にも適しています。特にコンテンツクリエイターやサービスプロバイダーが少額の支払いで収益を得る際に、RLUSDを利用すれば高額の取引手数料を負担せずに済むというメリットがあります。
eコマース:eコマースに携わる企業がRLUSDによる決済方法を採用することで、従来の決済システムよりも取引手数料を削減し、決済時間を短縮でき、顧客満足度の向上と業務運営の合理化を図れます。
スマートコントラクト:RLUSDはスマートコントラクトに対応しているので、特定の条件が満たされた場合に自動的に契約が実行される自動契約に利用できます。この機能は効率性と安全性を共に高め、金融や法務などの多様な契約に適用して取引を容易にします。プロセスの自動化により仲介者の必要性が低減するので、取引が迅速化し、信頼性が高まります。
Ripple USDはいつローンチされますか?
Ripple USDはNYDFSから最終承認を受けており、まもなくローンチされる予定です。当初は2024年12月4日にリリースが予定されていましたが、規制手続きのために延期されました。しかし、Ripple社CTOのDavid Schwartz氏は、2024年末までにローンチされる予定だと明言しています。
終わりに
Ripple USDは、国際送金やDeFiの分野で、信頼性が高く低コストな解決策を提供することを目的として開発されたステーブルコインです。米ドル建ての準備資産の裏付けがあり、安定性を確保する一方で、迅速な取引とブロックチェーンにおける広範な相互運用性を実現します。RLUSDは規制当局の承認を受け、機関投資家から強力な支持を得ており、確立されたステーブルコインに対して競争力のある存在になると見込まれています。しかし、その成功は、普及の拡大とRipple社のエコシステムへの効果的な統合にかかっており、有望ではあるものの、激しい競争にさらされることになるでしょう。
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