【PayPal USD (PYUSD)】ドル建て新ステーブルコイン、登場
ステーブルコインは暗号資産業界の画期的ソリューションとして登場し、分散型の暗号資産のメリットと従来の法定通貨の安定性という両資産の強みを利用することができます。ステーブルコインは安定した資産に価値をペグすることで、暗号資産の欠点とされているボラティリティに対処し、日常的な取引や価値貯蔵により使いやすくなります。
ステーブルコインが次々と登場する中、新たに注目すべきステーブルコイン「PayPal USD」が誕生しました。本稿では、PayPal USDについて詳しく説明し、その特徴、由来、デジタル金融領域にもたらすと考えられる影響について考察します。
この記事のポイント:
PayPal USDは、デジタル決済とWeb3環境向けに設計されたドルにペグされたステーブルコインです。Paxosと共同でPayPalが発行しています。
PayPal USDは、ドル預金、短期米国債、および同様の現金同等物によって裏付けられています。
対象となる米国のPayPalアカウント保有者は、PayPal USDの保有、売買、送受信が可能です。また、購入資金としてPayPal USDを使用することもできます。
PayPal USDとは?
PayPal USDは、デジタル決済とWeb3環境向けに設計されたドル建てステーブルコインです。
PayPal USDは、ドル預金、短期米国債、および同様の現金同等物に完全に裏付けられており、PayPalのアプリとウェブサイトの両方でドルと1対1で交換できます。
PayPal USDが誕生した背景
デジタル決済業界で名高いPayPalは、常に金融革新をリードしてきました。ブロックチェーンとWeb3環境の可能性を認識した同社は、暗号資産とステーブルコインの領域への参入を決めました。現時点では、PayPal USDは同社プラットフォームが対応している唯一のステーブルコインです。
このプロジェクトの背景には、従来の法定通貨とデジタルの世界の架け橋となり、両領域でシームレスな取引を実現したいという思いがありました。
PayPal USDのねらいとは?
PayPal USDは、Web3やデジタルネイティブ環境での決済の変革を目指しています。暗号資産の台頭とともに、ドルのような従来の法定通貨と簡単に連動することができる安定した金融商品が必要とされるようになりました。PayPal USDは、このニーズに対応するため、仮想決済の摩擦を減らし、即時送金を容易にし、世界規模での主要ブランドによるデジタル資産領域への継続展開を促すステーブルコインを提供します。
PayPal USDの仕組み
PayPal USDはイーサリアムブロックチェーンで発行されるERC-20トークンとして運営されています。ドル預金、短期米国債、および同様の現金同等物によって、完全に裏付けられています。他のドルに裏付けられたステーブルコインと同様、PayPal USDは、ドルと1対1の比率で交換することができます。
PYUSDはデジタル決済とWeb3向けに設計されており、広く利用されている暗号資産取引所、ウォレット、Web3アプリに対応しています。さらに、PayPalのエコシステム内でのユーザー体験を向上し、暗号資産取引所でも簡単に採用することができます。
PayPal USDの特徴
今後数週間で、対象となる米国内のPayPal Balanceアカウントの保有者は、以下の機能を順次利用できるようになります。
売買
PayPalアプリまたはPayPalウェブサイトで、米国のアカウント保有者は、1USD=1PYUSDの交換比率でPayPal USDを売買できます。売買に取引手数料はかかりません。
変換
PYUSDを購入したら、それを利用してPayPalネットワークが対応している他の暗号資産を購入することができます。また、他の暗号資産でPYUSDを購入することもできます。これにはPayPalの変換機能を使用してください。ただし、変換には手数料がかかり、手数料は変換する暗号資産のドル換算の価値によって異なります。
支払い
これまで以上に簡単に、暗号資産で商品を購入できるようになりました。暗号資産のクレジットカードやデビットカード(Bybitカードなど)をまだ持っていなくても、PayPalアプリを使ってオンラインストアで商品を購入することができます。PYUSDを法定通貨に即変換し、商品の支払に使用することができます。
送金・受け取り
米国のご家族や友人に暗号資産を送金する方法を検討している方も、PayPalアカウントがあれば、手数料無料でPayPal USDを送金することができます。実際、PYUSDをイーサリアムのウォレットアドレスに、素早く簡単に送金することもできます。
PayPal USDのこれまでとこれから
2023年8月7日のリリース以来、PayPal USDは対象となる米国の対象顧客に展開され、ステーブルコインの保有、売買、送受信が可能となりました。近い将来、同社はPYUSDの可用性を拡大し、より多くのアカウント保有者が利用できるようにする方針です。さらに、Venmoなどのプラットフォームへの導入も計画しています。
PYUSDトークノミクス
PYUSDは、ブロックチェーンにおけるドルの次世代用途を代表するものです。専門信託事業体としてフルライセンスを保有するPaxos Trust Companyは、PayPal USDの発行を監督し、ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)の管轄下にあります。NYDFSはPayPalに条件付きライセンスを付与した後、2022年にBitLicenseを付与しました。
2023年9月以降、PaxosはPayPal USDの裏付け資産に関する詳細なレポートを毎月発表し、利用者に完全な情報開示をする方針です。さらに、米国公認会計士協会(AICPA)が定めたガイドラインに沿って、外部の会計機関がこれらの準備資産の価値を検証します。
PYUSDは投資価値があるか?
PYUSDの投資可能性を評価するには、その強みと潜在的リスクの両方を総合的に理解する必要があります。強みは、PYUSDはPayPalという大手で評価の高い企業が提供している点です。PayPalはデジタル決済分野で長年の歴史を持ち、イノベーションとセキュリティを徹底してきたため、同社が関与することで、一定の信頼性を確立することができます。
しかし、他の暗号資産と同様、ステーブルコインにもリスクがないわけではありません。従来型資産にペグされることで安定した価値を維持するように設計されているとはいえ、外的要因がその安定性に影響を与えることもありえます。その一例が、2022年5月に暴落した別のステーブルコイン、TerraUSDです。このような事例により、暗号資産市場特有のボラティリティと予測不可能性を浮き彫りになっています。
PYUSDは、PayPalのような信頼できるブランドが関与している点からは、魅力的な投資機会となりますが、投資の際は、慎重に検討しましょう。徹底的な調査を行い、ステーブルコイン市場の複雑さを理解し、投資の黄金律「失う覚悟のある資金のみを投資する」に準拠する必要があります。
おわりに
PayPal USDは、従来型金融とデジタル世界の架け橋となる重要な一歩を踏み出しました。充実の機能とPayPalのような信頼のおける企業の提供により、デジタル決済の未来に期待することができます。金融業界が進化するにつれ、PayPal USDのようなイノベーションは、その方向性を形作る上で極めて重要な役割を果たすでしょう。