NFTガスフィー: その詳細と計算方法
オークションハウスとして有名なクリスティーズで「Everydays: The First 5000 Days」という名のデジタル画像コラージュが6,930万ドルという記録的な価格で落札された時、非代替性トークン（NFT）や暗号収集品への関心はピークに達しました。Beepleの名で親しまれるデジタルアーティストであるマイク・ウィンケルマン氏が制作したこのNFTは、デジタル専用のアートワークとして、オークションに出品された生前のアーティストによる作品としては3番目に高額な作品となるなど、新記録を樹立したのです。
その後NFTの人気は高まり、ブロックチェーン技術を自分の才能を収益化する手段と見なすクリエイターやアーティストたちを魅了してきました。今ではNFTの市場は急速に拡大し、日々何千ものデジタルファイルが交換されています。とはいえ、NFTの売買や譲渡には通常、取引コスト、つまりガスフィーがかかります。
もしあなたがNFTを取引したいと考えている場合、NFTガスフィーとは何か、なぜそれらが必要なのか、疑問に思うかもしれません。この記事では、NFTガスフィーの仕組みや、手数料が必要な理由、そして計算方法についてご紹介していきます。
ガスフィーとは？
ガスフィーとは、ユーザーがイーサリアム・ブロックチェーン上で取引を行うために支払う料金のことを言います。ガスフィーは、マイナーが取引を検証し、採掘したものをブロックチェーンに含めるために費やされた計算エネルギーやリソースを補償するために支払われます。言い換えればガスフィーは、イーサリアムのブロックチェーンネットワーク上で取引を記録するために必要な計算能力の量を反映したものなのです。
ガスフィーの通貨単位であるgweiは、イーサリアム・ネットワークのネイティブトークンであるイーサ（ETH）の端数です。1 gweiはETHの10億分の1、つまり1ナノイーサ（0.000000001 ETH）に相当します。
ガスフィーは、取引の複雑さやネットワーク上のトラフィック量によって変動します。当然ながら、より多くの計算能力を必要とする取引は、より高い手数料を要求します。また、イーサリアムネットワークのトラフィックが多いピーク時に取引を行うと、より高額な手数料が発生します。
ガスフィーは、荷物が取引される貨物輸送トラックサービスに例えることができるかもしれません。A地点からB地点まで運ぶ荷物が重ければ重いほど、燃料やガスは多く消費されます。また道路が混雑していれば、トラックも目的地まで行くのに多くの燃料を消費します。さらにトラック運送サービスでは、基本料金よりも高い料金を支払ってくれる客の荷物を優先的に運ぶことになるでしょう。
アーティストにとって、ガスフィーはどのような意味を持つのか？
アーティストやクリエイターは、イーサリアムネットワーク上でNFTを取引すると上記のようなガスフィーがかかってしまうため、高額になることを知っています。しかし同時に、彼らはNFTのガスフィーが、NFTを作成、販売、購入するために支払うべきコストであることを理解しています。もちろんガスフィーの存在は、NFTのクリエイターやアーティストに大きな影響をもたらします。では一体、ガスフィーはアーティストにとってどのような意味を持つのでしょうか。
一般に信じられていることとは異なり、NFTは常に高額で売買されるわけではありません。多くは数百ドル程度でほどほどに売れ、また多くは全く売れないかもしれません。NFTの作成と販売にガスフィーがかかることを考えると、儲かるどころか損をする可能性もあるのです。さらに、ガスフィーの水準は日々変化しているので、なかなか予想がつきません。
ガスフィーが高騰すると、アーティストが収益性の高い作品を制作し販売することが困難になる可能性があります。ガスフィーが高騰した際は、ガスフィーを補い、作品に関連するNFTをより手頃な価格にするために作品全体の価格を下げようとするアーティストもいるかもしれません。しかしこの場合、新たな課題が生じます。買い手はガスフィーに総価格の多くの割合を割り当てる価値があるかどうかを判断しなければならないため、結果的に作品の価値が低いと認識してしまう可能性があるからです。
ガスフィーはデジタル資産の絶対的な価値とは無関係であり、場合によっては売りに出された資産の価格を上回ることもあります。特に、まだ知名度が確立していない新人やこれからデビューするアーティストにとっては、いかんともしがたいことです。
つまり、まだ十分な評価を得ていないアーティストが自分の作品についてより高い価値を目指して高すぎる価格設定をしてしまうと、作品自体が売れなくなってしまう可能性があるのです。
ガスフィーはNFTのミンティングにどのように使用されるのか？
NFTのミンティングとは、デジタルファイルをブロックチェーンに格納されたデジタル資産に変換するプロセスを指します。イーサリアムのブロックチェーン上の他の取引と同様に、NFTのミンティングには、マイナーによるリソース集約的な演算が求められます。ガスフィーは、ブロックチェーンへの取引の記録（およびこの場合はNFTのミンティング）を支援するマイナーを補償する方法として考え出されたものです。
アーティストにとって、NFTのミンティングは比較的簡単で、YouTubeにビデオをアップロードするのと同じようなものです。ファイルをアップロードしたら、デジタルウォレットから支払われるガスフィーを承認する必要があります。料金を支払うと、ミンティングプロセスが開始されます。
ガスフィーはNFTの価値に直接関係しないため、デジタルアートの売り手と買い手は、取引で損をする可能性があります。言い換えれば、NFTの価値を上回るコストが発生する可能性があるということです。
なぜ、NFTのミンティングにはガスフィーが必要なのか？
ミンティングとは、ブロックチェーン上にNFTを作成する行為です。ブロックチェーンは中央当局等が所有しない分散型ネットワークであり、NFTをミンティングするマイナーによって維持されています。マイナーは自らの計算能力を駆使し、その見返りとして、時間と資源を賄うための対価を求めます。
ガスフィーは、ユーザーの取引を検証してブロックチェーンに追加するマイナーにインセンティブを与えることで、ブロックチェーンを維持するのに役立ちます。マイナーは、かれらの作業に対して報酬が支払われることになるため、より多くのガスフィーを稼ぐよう努力し、それによってネットワークの安全性が高まっていくのです。インセンティブが大きければ大きいほど、マイナーはブロックチェーンを安全にするために取引を検証するためのリソースをより積極的に費やすことになります。また、より多くの計算資源が採掘作業に注がれることになるため、取引速度も最適化されます。
NFTのミンティング費用はいくらか？
NFTのミンティングにかかる費用は、以下の項目に分類されます。
- ガスフィー– NFTをブロックチェーン上で取引・保管するための料金です。
- 口座手数料–ユーザーが利用するNFTマーケットプレイスから請求されます。
- リスティングフィー–販売のための出品料です。
これらは、ブロックチェーンごとに価格が異なります。また1つのブロックチェーン上の取引でも価格差があります。これらの手数料は、使用するデータ量、取引のスピード、時間帯など、いくつかの要因に左右されます。
NFTをミンティングするコストは多岐にわたります。フィアット通貨に換算すると、そのコストは1ドルから500ドル以上まで様々です。クリエイターは複数のNFTマーケットプレイスから利用したいものを選ぶことができ、プラットフォームはそれぞれに異なる手数料を徴収します。
イーサリアム
イーサリアムは近年人気が高まっており、より高価になっています。ネットワークの容量には限りがあり、プラットフォームを利用する人数が増えれば増えるほど、混雑が激しくなります。ガスフィーは需要と供給によって決まるため、最近ではコストが上昇してしまいました。
現在、イーサリアムのガスフィーは、ベースフィーとチップで構成されています。ベースフィーは上記のようなコストに使用され、チップはマイナーに支払われます。
決済手数料の合計＝ガス単位（上限）× （ベースフィー＋チップ）
例えば、ガス上限21,000、ベースフィー100 gwei、チップ20 gweiで、手数料の合計は252万gwei、0.00252 ETHとなります。これは約7.49ドル（1 ETH＝2,971.81ドルと仮定）に相当します。
イーサリアムのNFTのミンティングは高額になることがあります。NFTのミンティングガスフィーは、ネットワーク上の需要とETHの現行価格によって変動します。ユーザーは自らの取引をブロックチェーンに追加するために競争することから、ガスフィーは需要が高い時期にピークに達するのが一般的です。一部のNFTマーケットプレイスでは、ガスフィーとは別に、取引されるNFTのコストの一定割合であるリスティングフィーや取引手数料を少額ながら請求しています。
歴史的に見ると、NFTのミンティングコストは1取引あたり500ドルにも達しています。
RaribleやOpenSeaなどのNFTマーケットプレイスでは、アーティストに対して、誰かが購入するまでブロックチェーンへのNFTのミンティング（追加）を先延ばしにできるレイジー・ミンティングというオプションが提供されています。レイジー・ミンティングは、クリエイターの参入障壁を低くします。特に新参のアーティストにとっては、自分の作品がどの程度売れるかまだわからないため、有効な手段となります。
レイジー・ミンティングを利用することで、アーティストは支払いを販売時に先延ばしにすることができます。ガスフィーは販売と同じトランザクションで差し引かれ、通常、販売者やクリエイターの代わりに購入者がガスフィーを支払います。それ以外の場合は、通常のミンティングを選択することができます。これは、誰かがあなたのトークンを買いたいと思うたびにガスフィーを支払うことを意味します。
Solanaブロックチェーンにはレイジー・ミンティングオプションはありませんが、ガスフィーはイーサリアムよりずっと安価です。
Solana
ブロックチェーンの中ではイーサリアムが最も人気がありますが、NFTをミンティングして保存しているのはイーサリアムだけではありません。PolygonやSolanaなど、他にも存在します。
Solanaは現在人気を博しており、ブロックチェーン・ネットワークのトップとしてイーサリウムを追い落とす可能性さえあります。現在、取引量ではイーサリアムに次いで2番目に大きいブロックチェーンです。
イーサリアムと異なり、ネットワークの混雑で手数料が上がることは通常ありません。また、Solanaの手数料はイーサリアムよりも大幅に低いものとなっています。
SolanaでNFTをミンティングする際、クリエイターには3つのブロックチェーン・トランザクションが発生します。2つの承認トランザクションと、NFTをリスティングするためのトランザクションです。Solana上の各トランザクションのコストは約0.00045 SOLで、2022年3月初旬には約0.04ドルでした。
ガスフィーはNFTの価格に影響するか？
ガスフィーは、NFTの価格とは無関係です。NFTの価格は需要と供給が関係しており、買い手がその資産に何を支払う意思があるかに左右されます。
このため、NFTをミンティングする際にアーティストが損をすることがあります。ガスフィーが高く、デジタルアート作品が売れなければ、クリエイターは損失を被る可能性があるのです。
NFTの送受信にはガスフィーが必要
NFTの販売には、取引手数料やガスフィーなどの手数料がかかります。
新規の売り手はこのコストを知らないことが多いので、損をしてしまうこともあります。NFTの譲渡は、NFTをミンティングするよりも安いはずです。コストはマーケットプレイスによって異なるので、取引する前に確認することが重要です。現時点では、OpenSeaがガスフィーの大きな発生理由となっています。
ガスフィーの取り扱い方法
ガスフィーは1日中変化します。実際のガスフィーは需要と供給によって決定され、マイナーによって設定されます。
支払うガスフィーは、取引の複雑さ、関連する暗号通貨の価格、ネットワークのトラフィック量に依存します。
最低取引手数料は21,000 gweiです。1 gweiは1 ETHの10億分の1なので、最低でも0.0021 ETHとなります。これに現在のETHの価格を掛けると、最低取引手数料が算出されます。
スマートコントラクトとNFTは、最低額の21,000 gweiよりはるかに高いコストがかかります。これは、その複雑さと、取引に必要な計算力の大きさによるものです。NFTの取引は、高いガスフィーを支払うことをいとわなければ、はるかに高速となります。しかし、ネットワークが混雑しているときは、ユーザーが取引を迅速化しようとするため、ガスフィーが高騰するのです。
ゆっくり待つことができる倹約家のユーザーは、ガスフィーを節約するために、週末や日中の静かな取引時間帯に取引を行うことがよくあります。プラットフォームによっては、ガスフィーの上限を設定し、十分に安いときに取引を行うことができます。価格が下がる不定期な期間を待つことができるのであれば、これは選択肢の一つかもしれません。
ガスフィーの現在価格は、ガストラッカーを使ってインターネットで簡単に確認することができます。
ガスリミットの設定
ガスリミットとは、1つの取引で消費できるイーサの量に設定する上限です。この上限を設定すると、取引が拒否される可能性があります。しかし、一刻を争うような取引でない場合は、低い限度額を設定することで、費用を節約できる可能性があります。
ガスフィーの上限を必要以上に高く設定した場合には、余った分が払い戻されることもあります。一方、限度額を低く設定しすぎた場合、取引に失敗すると資金を失う可能性があります。また、マイナーが取引を行ってくれるまで長時間待つことになるかもしれません。
さいごに
近年、NFTの人気は急上昇し、多くのアーティストやクリエイターにデジタルな自由を与えています。ブロックチェーン技術は、彼らに新しい市場を提供し、そこで商売をする可能性を与えているのです。しかし、これらの市場を利用するにはコストがかかり、アーティストがミンティングと販売のコストを理解しない限り、損をする可能性があります。
アーティストは、ガスフィーの上限を設定したり、市場が静かなときに取引をするなどして、ガスフィーを節約することができます。新しいクリエイターは、レイジー・ミンティングオプションを利用し、NFTが販売されたときに支払うようにすることができます。このように、取引のコツを知っているユーザーは、ブロックチェーンで大成功を収めるまでのコストを下げることができるのです。