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VWAP指標とVWAP戦略を用いて仮想通貨のデイトレードを行う方法

中級者向け
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17 de oct de 2023

一般に、売買高加重平均価格(VWAP)はデイトレーダーに適したテクニカル分析ツールとされています。その主な理由は、短期的なエントリポイントやエグジットポイントを正確に特定できることにあります。仮想通貨は価格変動が大きく、仮想通貨市場は1日に24時間開いているため、トレーダーは投資機会から収益を得る方法を常に模索しています。VWAP取引は売買タイミングの決定が容易な取引手法であり、多くのデイトレーダーがVWAP取引を中心として仮想通貨の戦略を構築しています。

売買高加重平均価格(VWAP)とは何か?

売買高加重平均価格(VWAP)はデイトレーダー向けのツールであり、価格を売買高でウェイト付けすることにより、市場のトレンドが買われすぎまたは売られすぎであるかどうかを判別する目的で用いられます。VWAPを用いると、株式市場や仮想通貨市場において売買のタイミングを特定できます。

VWAPを正しく解釈すれば、過去に行った取引に対する相対的価値に基づいて、買い出動のタイミングを的確に知ることができます。また、資産の価格変動が過大で急速すぎる場合にはそれを知ることができ、ポジションの手仕舞いを検討できます。

VWAPを使用して将来の市場トレンドを予想する方法

VWAPのしくみを学ぶにはVWAPの算出方法を理解することが大切です。

まず、VWAPラインは各取引日ごとにリセットされます。VWAPはデイトレーダー向けのツールなので、各取引日の開始時に計算がリセットされるという点が重要です。

上記のビットコインのチャートでは、青い線がVWAPラインです。黒い縦線は新しい取引日の開始を表しています。この黒い線のすぐ後ろ、つまり取引日開始直後は、青い線の傾きが大きくなっています。これはVWAPの計算がリセットされたためです。

VWAPの計算では、まず「標準価格」という価格を算出します。その計算式は次のようになります。これは1本のローソク足の期間内における高値、安値および終値の平均値を求める計算です。

標準価格 = (高値+安値+終値) ÷ 3

ほとんどのチャートや指標はローソク足の終値を基準としています。したがって、通常の場合、15分足チャート上の指標については、各15分足の終値を用いて計算を行います。VWAPでは、通常の場合、各ローソク足の高値、安値および終値の平均値を取り、それをその期間の真の価格とします。この方法は、現在と将来のトレンドを把握できるため、市場が反転した場合に有効です。

標準価格を用いてVWAPラインを描画する

上記のように算出した標準価格(TP)に、現在の期間の売買高(V)を乗じて、現在の期間の「TP ✕ V」の小計を求めます。

現在の期間の小計 = 標準価格 (TP) ✕ 売買高 (V)

15分足チャートを用いる場合は、各15分間の売買高に標準価格を乗じて、その15分間の小計とします。

現在の取引日の開始から現在までのすべての15分足について、各15分間の「TP ✕ V」の累計値を求めます。

最後に、現在の取引日の開始から現在までの累計売買高に対する「TP ✕ V」の累計値の割合を求めます。

VWAP = (TP ✕ V) の累計値 ÷ 累計売買高

この計算結果をプロットすると、価格チャートの間を縫うように動く線となりますが、通常は仮想通貨価格に沿った動きを示します。

なお、VWAPラインは、コンピューターのチャート描画ソフトウェアが自動的に価格チャート上に描画するので、お客様各自が上記の計算を行う必要はありません。

VWAPを用いて買われすぎ・売られすぎの水準を把握する

VWAPは、各価格レベルでの取引高を勘案した平均価格です。したがって、VWAPラインは真の平均価格とみなすことができます。

資産価格がVWAPラインより上にある場合は、割高かつ買われすぎと考えられます。買われすぎの市場でも買いは可能ですが、より多くの資金が必要になります。

一方、資産価格がVWAPラインより下にある場合は、市場が割安であることを表しており、おそらく買いの好機と言えます。その場合でも価格が下落することはありえますが、割高なときに買うよりも相対的バリューが高くなります。

VWAPを用いたトレンド予想にはどのチャートが最適か?

VWAPはデイトレーダー向けのツールです。仮想通貨のデイトレードで、ポジションを当日中に手仕舞うような場合には、VWAPは優れたツールとなります。

仮想通貨の取引では1分足、3分足、5分足、15分足などの分足チャートがよく使われます。そのような短期間のチャートでVWAPを用いると、VWAPが売買高に連動していることがよくわかります。

売買高はVWAP計算の重要な部分であり、取引所での取引が行われる市場(仮想通貨市場や株式市場など)はVWAPの利用に最も適しています。外為は店頭取引であるため、売買高の入手が困難であり、入手できたとしても正確でない場合があります。そのような場合、VWAP指標は誤ったシグナルを発することがあります。

VWAPを用いたデイトレード戦略

VWAPを用いて取引機会を発見する方法は複数あります。それを詳しく見ていく前に、それらの戦略にとっては市況変動がプラスにもマイナスにも作用しうるという点に注意する必要があります。

たとえば、通常のデイトレーダー(短期トレーダー)は年中無休で24時間の取引を行い、週末も休みません。VWAPは週末にも計算されますが、週末の大きな取引では市場が一方向に大きく動く可能性があるため、週末に取引を行うことはあまり望ましくありません。

そのため、これらの取引戦略は、仮想通貨の売買の大半が行われる月曜日から金曜日までの期間に実施するものとお考えください。

取引戦略1:リトレースメント取引

最初の戦略は保守的な戦略です。ここでは市場の大幅な上昇に期待します。この戦略では、ビットコイン(BTC)やイーサリアムなどの主要仮想通貨市場の15分足価格チャートとVWAP指標を用います。

まず、仮想通貨市場が上昇トレンドにある場合は、ロングポジションの参入ポイントだけを発見するように取引を行います。

仮想通貨市場が下落してローソク足の終値がVWAPより下になるのを待ちます。そのような状態は、買いシグナルが近づいていることを知らせる警報となります。

次に、ローソク足の終値が再びVWAPラインより上になるのを待ちます。ローソク足の終値が再びVWAPラインより上になったら、次のローソク足の開始時点でロングポジションを開始します。

損切りラインを直近のスイングロウのすぐ下に設定します。この場合、価格が直近安値を下回ると、VWAPを下回って下落することになります。

上記のビットコインのチャートでは参入ポイントと損切りラインとの距離は410ビットコインポイントとなっています。ここでは、参入価格と損切りラインとの距離の2倍以上を収益目標とします。上記のチャートで言えば、収益目標は410ドル ✕ 2 = 820ドルとなります。つまり、参入価格である32,129.50ドルに820ドルを加えた32,949.50ドルが収益目標水準となります。

取引戦略2:VWAPバンドとチャネル

第2の戦略はやや積極的な戦略です。この戦略では参入価格が低くなり、損が生じる取引の数が多くなります。

チャートを開き、ローソク足を5分足に設定して、VWAPを加えます。この戦略では追加のツールを使います。VWAPの上下のバンドを有効にし、幅を標準偏差の2倍にします。

これによりVWAPの上下に境界が追加されます。仮想通貨市場が上昇トレンドにある場合は、買いシグナルだけを発見するようにします。

市場が下落して下のバンドを下回るのを待ちます。価格が下のバンドの下に抜けたら、価格が下のバンドを上回って上下のバンドの間(チャネル)まで戻るのを待ちます。

次に、ロングポジションを開始し、チャート上でリスクを直近のスイングロウの下に設定します。戦略1と同じように、収益目標を参入価格と損切りラインとの距離の2倍に設定します。

上記のイーサリアムのチャートでは、価格が下のバンドを下回り、2本後のローソク足で下のバンドより上に戻っています。イーサリアムの価格がグリーンチャネルの内側まで戻ると買いシグナルとなります。リスクと損切りラインは週内の直近のスイングロウに設定します。

イーサリアムの価格が上昇して収益目標に到達します。

VWAPと移動VWAP(Moving VWAP)の違い

上で説明したように、VWAPの計算はデイトレーダーの利便性を目的として毎日リセットされますが、トレーダーが価格の加重平均の全体的なトレンドを知りたいと希望することもあります。そういう場合には移動VWAP(MVWAP)を利用します。

移動VWAPとは、要するにVWAPの移動平均です。VWAPと移動VWAPはどちらも名前にVWAPを含んでいますが、両者には大きな違いがあります。

第1に、VWAPは短期的なデイトレーダー向けに開発されたものです。移動VWAPはチャート上の長い期間(数日、数週間、数ヶ月など)について利用できます。

第2に、VWAPは1日をとおして合計を順次計算し、その日の取引終了時に終了します。VWAPの計算は各取引日の開始時点で新しく開始されます。移動VWAPは任意の時間範囲における平均を算出するものです。つまり、計算に終わりはなく、次の日へと持ち越されます。

第3の違いは指標としての利用法です。VWAPは、売買高に基づいて買われすぎと売られすぎの数値を表示します。一方、移動VWAPは移動平均クロスオーバー戦略として利用できます。

VWAPと併用できるテクニカル指標

VWAP指標の基本は、価格が割安または割高とみなしうる時点を判定することですが、VWAP指標を単独で用いると不正確なシグナルが生じる可能性もあります。VWAPを補完する2つの優れた指標があり、それらを併用すれば取引機会の発見に役立ちます。

ピボットポイント

ピボットポイントは、取引ピット(のコンピューター)で取引が行われていた時代に、フロアトレーダーが利用していた指標です。フロアトレーダーは、市場のリバーサルポイントを見分けるために、頭の中で簡単に計算できる指標を必要としていました。

日次のピボットポイントは価格に連動した指標であり、市場が転換点を迎えて反転するシグナルとなるため、デイトレーダーにとって重要です。

上の画像では、黒い横線がピボットポイントを表しています。また、オレンジの横線はさまざまなピボットレベルを表しています。市場が黒い線を下回っているときは、オレンジのピボットレベルが支持線として価格を支持しています。

ピボットポイントは、市場がVWAPより下で推移している時期にロングポジションの参入ポイントを発見しようとする場合に有効です。仮想通貨のデイトレーダーは、価格がS1、S2またはS3に到達するまでロングポジションの開始を待機できます。

S2サポート価格を表示している上記のチャートの期間は2日間です。

VWAPとトレンドライン

もう1つのテクニカル分析ツールはトレンドラインです。これはサポートレベルとレジスタンスレベルを生成するもので、VWAPとの併用に適しています。トレンドラインは、たとえばトレーダーが複数の日数にわたるトレンドの方向を見極めようとする場合に有効です。また、トレンドラインを使えばトレンドが転換・反転するポイントを特定できます。

上のチャートでは、デイトレーダーはチャート上の複数日数のトレンドラインにより価格が反転する可能性がある領域を特定できます。トレンドラインが価格に接触しているポイントでは価格がVWAPラインを下回っていますが、これは価格が割安でバリューが良好であることを表しています。

VWAPは信頼できるか?

デイトレードは本来リスクが高く、トレーダーはVWAPにより投資の一貫性を高めることができますが、市場のノイズによりVWAPが誤ったシグナルを発してしまう例もあり、そのような状況を把握しておくことが重要になります。

VWAPの計算には売買高を用います。そのため、市場の売買高が少ない時期が続けば、VWAPが横ばいのレンジ相場を示す可能性が高まり、その結果としてVWAPのシグナルが信頼できないものになる場合があります。

また、VWAPが示すシグナルが大半の時期において信頼できるとしても、頻繁な取引を行えばそのコストが利益を侵食します。各オープンポジションについては、トレーダーがスプレッドコストを負担することになります。ポジションを開いた後ですぐにポジションを閉じても利益を得ることはできません。なぜなら、マーケットメイカーが、取引を提供した対価としてスプレッドを得ようとするからです。

おわりに

VWAPは加重平均価格の判定に役立つためデイトレーダーにとって有効なツールとなります。バンドとチャネル、ピボットポイント、あるいはその他のサポートレベルやレジスタンスレベルといったツールを併用することにより、VWAPに関係する多数の仮想通貨取引戦略を構築できます。ただし、VWAPに適していない市場環境下でVWAPを用いると、誤ったシグナルの発生が起きやすくなります。