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Arbitrum(アービトラム)とは?Optimisticロールアップ技術を使用する妥協のないスケーリングソリューション

上級者向け
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2023年11月9日

イーサリアムは急成長が続いており、需要に追いつけないという問題を抱えています。およそ3,000のDApp(分散型アプリ)を動作させ、デイリーアクティブユーザー9万人以上のトランザクションを1日に20万件以上を処理しており、イーサリアム2.0でも長期的にスケーラビリティが不十分になることは明らかになっています。そのため、イーサリアムブロックチェーンの長期的な成功に、Arbitrum(アービトラム)のようなイーサリアムのスケーリングソリューションは不可欠です。

サイドチェーン、チャネル、ロールアップなどのレイヤー2ソリューションによって、コストをかけることなく、速度とセキュリティを強化し、イーサリアムを利用、開発できるようになります。ここでは、Arbitrumでいかにロールアップをさらなる高みへとレベルアップできるかを、初心者と上級者両方の仮想通貨愛好家向けに解説します。

Arbitrumとは何か、利用目的は?

Arbitrumはイーサリアムのスケーリングソリューションです。ブロックチェーンネットワークでより多くのトランザクションを低コストでスムーズに処理できるようにすることを目的としています。イーサリアムと同じツールを使用していることから、DAppの開発者はArbitrumを使用し、イーサリアムにおいて迅速、簡単かつ安全にアプリをデプロイできます。

Arbitrumは、イーサリアムのブロックチェーンネットワークでより多くのトランザクションをスムーズに処理し、不正を防止し、運用コストを下げるために使用されます。このイーサリアムスケーリングソリューションは、オンチェーンのデータ保存量を抑えるイーサリアムベースのプラットフォームを開発者に提供し、シームレスで高速、安全なDAppの開発を実現します。

イーサリアムのスケーリングソリューションとは?

イーサリアムのスケーリングソリューションは、レイヤー1ブロックチェーンネットワークを高速化し、大量のトランザクションを処理する能力を向上させるために利用されています。レイヤー1ネットワークの例として、イーサリアムやビットコインが挙げられます。レイヤー1ソリューションは、追加の処理レイヤーを加えるのではなく、ブロックチェーンネットワーク自体のプロトコルを変更することを目的としています。

Arbitrumはレイヤー2ソリューションです。つまり、オンチェーンで構築されるスマートコントラクトによって実現するレイヤー1の拡張機能です。Arbitrumは、トランザクションを処理するための追加のスペースを作り出します。このソリューションは、オフチェーンでトランザクションを実行した後、メインチェーンに記録して、高速化とコスト低減を実現し、DeFiネットワークを維持します。

Arbitrumとは何か、ブロックチェーンネットワーク上でどのような目的で利用できるかをよりよく理解するため、さまざまなタイプのレイヤー2イーサリアムスケーリングソリューションについて説明し、その中でArbitrumがどのような位置づけかを探ります。

サイドチェーン

サイドチェーンはレイヤー1の機能を拡張するために開発されました。レイヤー1ネットワークと並行するブロックチェーンネットワークを稼働させ、オフチェーンでトランザクションを処理することによって機能します。サイドチェーンは基本的にレイヤー1とは別のチェーンであり、レイヤー1のセキュリティで保護されず、分散性が低下します。問題は、不正行為を働くバリデーターによって操作される可能性があるほか、セキュリティ基準がチェーンによって異なる場合があることです。

ブロックチェーンを使用するトランザクションを開発者がどのように実行しようとしているかについて、その変化がサイドチェーンに現れています。サイドチェーンは、単一の台帳を保持するのではなく、メインのブロックチェーンネットワークに接続された多数のレイヤーで構成されるブロックチェーンモデルを導入します。

Plasma

Plasmaフレームワークは、トランザクションの実行をサイドチェーンにオフロードします。さらなるスケーラビリティを確保することもできます。Plasmaは、スマートコントラクトとマークルツリーを活用し、サイドチェーン、または子チェーンを無限に作成できます。また、メインブロックチェーンネットワークのさまざまなニーズに対応する特定の方法で動作するよう設計されています。

Plasmaは安全性と強制力のある交換可能性を保証する不正証明も提供しています。つまり、どのような利用者も、より高速に、レイテンシーを抑えて、ネイティブプラットフォームで通貨を他の利用者に送金できます。

チャネル

ブロックチェーンのスケーラビリティについてさらに深く掘り下げると、ステートチャネルとペイメントチャネルにたどり着きます。チャネルは、オンチェーンで発生するトランザクションを2件のみに制限し、オフチェーンでトランザクションを一定数行えるようにするスマートコントラクトおよびオープンソースプロトコルです。

参加者は新たなチャネルを開設する際にイーサリアムのトランザクションを作成し、資金を投入しなければなりません。チャネルが開いている間、オフチェーンのトランザクションが発生する可能性があります。利用者がチャネルを閉じる準備を整えると、トランザクションを処理するには再度料金が課されます。

チャネルのメカニズムは、イーサリアムネットワークで処理されるトランザクション数を減少させ、チャネルを開設、閉鎖するためのガス料金を抑えます。

厳密に言えば、ペイメントチャネルは利用者間で資金を移動させることを目的としています。ステートチャネルはブロックチェーンの一部をロックすることにより、2者間の手数料なしの経路を作成するよう設計されています。すべてが2者間のサイドチェーンチャネル内で発生するため、きわめて安全性の高いソリューションです。ただし、さらなる処理量に対応してスケールする能力は十分ではありません。

ロールアップ

ロールアップは、ブロックチェーンアプリケーションで最もよく知られるコントラクトベースのスケーリングソリューションの1つとなっています。ロールアップは基本的に、トランザクションをバッチに「ロールアップ」し、オフチェーンで検証することによって、メインチェーンをスケールさせます。ロールアップは、データをロールアップし、圧縮して、さらなるスループットと速度を実現し、トランザクションコストを低減させます。

主に2種類のロールアップがあります。ZK(ゼロ知識)ロールアップとOptimisticロールアップです。

ZKロールアップ

ZKロールアップは、ZK-STARK(「ゼロ知識のスケーラブルかつ透明性のある知識の論拠」)という有効性証明を利用してデータを検証し、オフチェーンで計算処理を実行します。有効性証明は各データバンドルに添付されますが、トランザクション数を増やして実行することもできます。ゼロ知識証明は、何かが真実であることを、その状態、それが何であるか、その量などを明らかにすることなく証明する、公に検証可能な証拠であるため、強力なセキュリティを実現します。

Optimisticロールアップ

Optimisticロールアップは、ノードで不正なトランザクションが発生していると疑われる場合のみ確認の証明を行うことにより、オンチェーンの計算処理を制限します。不正が疑われる場合にのみ有効性証明を実行することで、Optimisticロールアップはトランザクションの速度とスループットをさらに向上させます。

Arbitrumロールアップ

Arbitrumは高度なOptimisticロールアップです。オンチェーンでごくわずかなデータを保存し、最適なスケーラビリティを実現します。イーサリアムのネットワークに構築されており、TPS(秒ごとの取引件数)は最大4,500件に及びます。イーサリアム2.0で期待される約3,000TPSより高速です。Arbitrumは、イーサリアム仮想マシン(EVM)のスマートコントラクトを含むすべてのイーサリアム開発者ツールで動作します。数多くの統合オプションで、Arbitrum用の標準的なイーサリアムフロントエンドツールが提供されており、DAppを簡単に構築、デプロイできます。

Arbitrumのしくみ 

Arbitrumは、イーサリアムのチェーンにおけるコントラクトで管理されるオフチェーンのOptimisticプロトコルに従います。つまり、オフチェーンでトランザクションを検証した後、ブロックチェーンにデータを送り返すしくみです。開発者はソリディティ(Solidity)を使用してスマートコントラクトを作成し、Arbitrum仮想マシンで動作するコードへとコンパイルすることができます。

では、実際にどのように機能するのでしょうか。

Arbitrum仮想マシン

マークルツリーは、暗号化ハッシュ値を算出できるよう、Arbitrum仮想マシンのステートを整理します。ハッシュはその後、ステートを十分に確認し、ファイナライズできるようにするため、オンチェーンに保存されます。最終のハッシュ値のみがオンチェーンで保存されます。

仮想マシンのステートは、合意の参加者がDA(紛争が起こりうるアサーション)を提起すると前進します。アサーションは、仮想マシンが計算時に一定量を実行するよう指示します。合意の各参加者は、アサーションの有効性を保証するため、保証金を差し入れる必要があります。

DAが有効であれば、システムは新しいステートに入ります。DAが無効であれば、Arbitrumによって拒否され、ステートは変わりません。

Arbitrum仮想マシンはパイプラインを利用して複数のDAを処理する一方、検証ノードでは、どの程度高速に処理できるかが確認されます。また、悪意のある参加者は、他のプロトコルと同じようにシステムを遅延させることはできません。

信頼の必要はない

Arbitrumのしくみについて理解するために最も重要な点の1つは、信頼の必要がないことです。誠実な参加者が1人でも合意に関係している限り、正しいブランチが信用されるか否かにかかわらず、Arbitrum仮想マシンは正しく前進します。信頼のプロセスは、参加者がArbitrumで有効なトランザクションを実行する過程で時間をかけて作り出されます。

Arbitrumはイーサリアムの限界をどのように克服するのか?

イーサリアムは2015年にリリースされて以来、多くの支持を得てきました。しかし、スケーラビリティが常に問題となっており、イーサリアムネットワークの可能性を最大限に発揮できていません。スケーラビリティが保証されなければ、開発者もネットワークの能力や処理できるトランザクション量の制約を受けます。ブロックチェーン技術は、本質的にスケーラビリティの問題で壁にぶつかっています。だからこそ、Arbitrumはイーサリアムを前進させることができます。

ブロックチェーンのトリレンマ

ブロックチェーンのトリレンマとは何でしょうか。簡単に言えば、スケーラビリティ、分散化、セキュリティの3つを指します。ブロックチェーンプロジェクトで、3つすべてのバランスを取ることは困難であるとされています。こうしたブロックチェーンのトリレンマを解決するソリューションを見出せれば、仮想通貨とブロックチェーン技術について、私たちの考え方が変化するかもしれません。

現在、ブロックチェーンはArbitrumなどのロールアップを活用して、3つをバランスさせ、安全でスケーラブルかつ分散化されたブロックチェーンを創出しています。Arbitrumでイーサリアムの限界を克服する方法について、いくつか考えてみましょう。

処理能力

イーサリアムは10TPS程度しか処理できませんが、Arbitrumが処理できる秒ごとの取引件数は最大4万件です。世界で最も広範に利用されているL1プラットフォームであるイーサリアムの4,000倍の速さに相当します。

料金の低減

イーサリアムやビットコインなどのよく知られているレイヤー1ネットワークに共通する課題は高額のガス料金です。オンライン取引所のトランザクション手数料は1.5%から2.3%程度です。Arbitrumによって、はるかに少ないガスで大量のトランザクションを処理できるようになります。料金をさらに下げる取り組みも進められています。

イーサリアム仮想マシン(EVM)の互換性 

Arbitrumは、レイヤー2ソリューションの中で最もEVMの互換性に優れています。使いやすく、開発者が理解しやすく、イーサリアムブロックチェーンで十分に強力なスケーラビリティを発揮します。

開発者

Arbitrumは特に開発者にとって有用です。EVMと互換性があり、ソリディティ(Solidity)のコードを使用します。コンパイラやバージョンの制約はありません。ガス使用量の制限もないため、スマートコントラクトの開発者はプロジェクトをさらなる高みへとレベルアップさせることができます。

ロールアップは普及すればいずれ限界を迎え、時代遅れになるとイーサリアム2.0の支持者は確信していますが、Arbitrumロールアップがこれまでになかったようなスケーラビリティを実現しようとしていることは明らかです。一部のレイヤー2ブロックチェーンで独自の通貨がリリースされる予定ですが、Arbitrumはトランザクションにフォーカスしたしくみであることが明確にされています。

ArbitrumとOptimism

ArbitrumとOptimismは、Polygonが成し得なかったことが糧になっている部分もあります。Polygonは無料ですが、ArbitrumとOptimismには、他のロールアップとは比較できないような特長があります。どちらもイーサリアムのメインチェーンに直接組み込まれており、最適な可視性とセキュリティを実現しています。

ArbitrumとOptimismにはいくつかの類似点がありますが、両者を際立たせているのは、その相違点です。どちらのロールアップがお客様の目的に最も適した選択肢かを判断できるよう、類似点と相違点について詳しく説明します。

ArbitrumとOptimismの類似点

ArbitrumとOptimismは、いずれもOptimisticロールアップであると考えられている点を理解することが重要です。レイヤー2ソリューションについて、上記のセクションで簡単に触れましたが、ここではArbitrumとOptimismの関係において、どのような役割を果たすかを見ていきます。

ArbitrumとOptimismはいずれも、複数のトランザクションを単一のトランザクションに圧縮できます。さらに、イーサリアムブロックチェーンの外でトランザクションを処理した後、メインチェーンにデータを送り返します。

イーサリアムメインチェーンの外でトランザクションを処理することで、OptimismやArbitrumなどのOptimisticロールアップは、オンチェーンで取引を完了させるために必要な時間を大幅に短縮できます。さらに、OptimismとArbitrumはいずれも、既存のスマートコントラクトに組み込むことが可能です。

ArbitrumとOptimismが対処しなければならない欠点は、チャレンジを受けたトランザクションが1週間保留される可能性があることです。これはロールアップで不正なトランザクションを防ぐための1つの方法ですが、デジタル資産をメインチェーンに送り返したい場合、ある程度時間を要する場合があります。

ArbitrumとOptimismの相違点

ArbitrumとOptimismは一見、同一のOptimisticロールアップのようですが、重要な相違点が1つあり、両者の違いを際立たせています。不正なトランザクションをどのように扱うかという点です。

Optimismは、不正なトランザクションをオフチェーンで処理する際、ロールアップでEVMを通じてトランザクション全体を送り返します。Arbitrumは、疑わしいトランザクションをオフチェーンで処理する場合、EVMを通じてトランザクションの疑わしい部分のみを送り返します。

このような不正防止のメカニズムの違いによって、ArbitrumはOptimismと一線を画したものとなっています。また、疑わしいトランザクションはすべてオフチェーンで処理されるため、ArbitrumはOptimismより高いトランザクション能力を発揮できます。

表1:ArbitrumとOptimismの特長

Arbitrum

Optimism

ブロックチェーン

x

x

DApp

x

DeFiプロジェクト

x

レイヤー2プロトコル

x

x

スマートコントラクト

x

x

SaaSデプロイメント

x

x

ArbitrumとOptimism、どちらが優れているか?

現時点で、ArbitrumとOptimismのどちらが優れているかを明言することは困難です。ブロックチェーンが急速に発展していることを踏まえれば、想定していた以上に高速で安全なレイヤー2ソリューションが実現する可能性もあるでしょう。

セキュリティと不正防止に関しては、現時点でArbitrumが最も優れたしくみを提供していると言えます。一方、Optimismのトランザクション速度は、流動性の高いデジタル資産を求める利用者に適しています。

どちらかを選ばなければならない場合、BybitはArbitrumを選びます(実際にArbitrumを選択しています)。Arbitrumは、セキュリティを犠牲にすることなく、スケーラビリティと速度を向上させ、イーサリアムネットワークでDeFiとDAppをサポートしています。また、運用コストと取引コストを抑えています。本稿執筆時点で、Arbitrumは、昨年メインネットがリリースされて以来、レイヤー2ネットワーク全体で総預かり資産額(TVL)の60%を占めています

今後を展望すると、Arbitrumは他のどのレイヤー2より、DeFiやブロックチェーンコミュニティに多くのものを提供できるでしょう。

ArbitrumでBybitへの入出金が簡単に

ぜひArbitrumをご体験ください。Bybitを利用すれば、ETH、USDT、USDCをArbitrumネットワークで簡単に入出金できます。Bybitのプラットフォームで、Arbitrumにおける取引の速度、セキュリティ、コスト効率を実現します。

Bybitでどのように仮想通貨を取引できるか?

Bybitは世界で最も急成長している仮想通貨取引所の1つです。世界中の何百万人ものトレーダーから高い信頼を得ています。Bybitの効率的なプロセスと操作しやすいダッシュボードで、ビットコイン、イーサリアム、USDTを簡単に購入できます。Bybitは、80以上の決済方法のほか、9種類の法定通貨に対応し、仮想通貨市場における取引、P2P取引、非代替性トークン、デリバティブなど、仮想通貨を扱う多数の手段を提供しています。

Bybitのデスクトップアプリとモバイルアプリで、効率的に資産を入出金できます。

Bybitで入金するには

  1. 「資産」タブに移動し、「入金」をタップまたはクリックします。

  2. 次に、入金する通貨のタイプを選択します。

  3. 次の画面でBybitの宛先アドレスをコピーします。(:一部の通貨は、お客様のメモやタグが必要な場合があります。これはお客様のBybit IDです)。入金が行われます。

Bybitで出金するには

  1. 「資産」タブで「出金」をタップまたはクリックします。

  2. 出金したいチェーンタイプを選択します。

  3. 資産を受け取るウォレットのアドレスを選択し、数量を入力して出金します。

終わりに

絶えず拡大を続け、さまざまなチェーン間の相互作用を模索しているブロックチェーンエコシステムにおいて、Arbitrumのスケーリングソリューションは、仮想通貨とブロックチェーンの将来に何が待ち受けているかについて展望をもたらしています。比類ない速度、重要なビルトインセキュリティプロトコル、そして低運用コストによって、DeFiのユースケースは、Arbitrumの台頭とともに、ますます明確になっています。