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未来を紐解く:仮想通貨市場は持ち直すのか?

中級者向け
仮想通貨
19 de out de 2023

ここ数年、仮想通貨(暗号資産)の価格は、いつまでも上昇し続けるかのように見えました。しかし、好ましい状況も、いつかは幕を閉じます。2022年後半、仮想通貨市場は暴落に見舞われました。仮想通貨はもはや、安全な投資先ではないのでしょうか? この大暴落から立ち直る未来はあるのでしょうか? この記事では、これらすべての問いに答えるとともに、仮想通貨の今後の価格動向についても詳しくご説明します。

この記事のポイント

  • 仮想通貨の強気相場は、2021年末ごろに幕を閉じました。

  • 仮想通貨が暴落した要因は、多岐にわたります。インフレ進行の懸念、TerraUSDとLUNAの暴落、有名な仮想通貨企業の相次ぐ連邦破産法第11条申請、FTXの凋落、SECの取り締まり強化などです。

  • 仮想通貨市場は持ち直すのか? 持ち直しの原動力は、仮想通貨の利用拡大、金利の低下、政府規制の透明性向上などです。

なぜ仮想通貨は暴落したのか?

新型コロナウイルス感染症が流行し始めた当初、多くの人が「仮想通貨市場は暴落の運命にある」と不吉な予言をしていました。ところが、ふたを開けてみれば、2020年と2021年は、仮想通貨の見事な強気相場でした。新市場のイノベーションや仮想通貨取引に関心を寄せる投資家の大幅増など、その理由はさまざまです。ビットコインは1兆ドルの時価総額を突破し、複数の通貨が過去最高値を更新しました。しかし、強気相場も永遠には続かなかったのです。

インフレの進行

2021年後半にはインフレ懸念が巻き起こり、借入コストの増加を嫌気して仮想通貨相場が下落に転じました。ビットコイン価格は2021年11月10日に69,044.77ドルで最高値を付けた後、投資家がより安全な資金の避難先を求める中で、12月中旬には46,696.30ドルまで下落しました。下げ相場は2022年1月まで続き、ビットコイン価格は35,180.44ドルにまで下落しました。

TerraUSDとLUNAの暴落

アルゴリズム型ステーブルコインであるTerraUSD(UST)の値動きが不安定になり、2022年5月には1ドルの節目を割りました。この影響で姉妹トークン「LUNA」も暴落して市場はパニックに陥り、400億ドル超の時価総額が失われました。ビットコイン価格は、6月中旬には19,047.42ドルまで下げ、時価総額も半年で半分になったほどです。根強いインフレや中央銀行の金融政策など、マクロ経済要因が重くのしかかった結果です。

連邦破産法第11条の申請

仮想通貨市場は、2022年6月に大底を打ちました。深刻な市況を理由に、セルシウス・ネットワークやバイナンスなど主要なプラットフォームが保有者の出金を停止しました。とりわけ、セルシウス・ネットワークは従業員の約23%に及ぶ解雇を余儀なくされました。2020年末から従業員数は5倍以上に増加していた矢先のことです。スリー・アローズ・キャピタルは、6億7千万ドルに及ぶローンを抱えて債務不履行に陥りました。ビットコインは6月に時価総額の約38%を失い、過去最大の下落幅を記録しました。

スリー・アローズ・キャピタルは、7月に連邦破産法第11条の申請を開始し、その後にボイジャー・デジタルセルシウスも続きました。各社の凋落は、リスクの高い戦略、ローンの債務不履行、流動性の枯渇が主な原因でした。同時期に、FTXのサム・バンクマン=フリードCEOが業界の救世主として活躍しました。

FTXの没落

しかし、FTXも2022年11月に窮地に立たされます。世界最大級の仮想通貨取引所であったFTXは、仮想通貨の価格にきわめて大きな影響力を持っていました。同取引所が不安定な事態に陥ったとの噂が広まるとすぐに、投資家の動揺が仮想通貨価格に現れ始めます。バイナンスがFTXの買収を検討するニュースが流れると、事態が収束するものと市場は安堵したようです。しかし、バイナンスは最終的に、FTXのリスクがあまりに高くて買収から撤退する旨を公表します。その後、仮想通貨の価格は急落し、2022年11月にはビットコイン価格が15,742.44ドルを付けました。

セコイア・キャピタルやマルチコインキャピタルなど、FTXを支援していた投資家は投資額の評価をゼロへ切り下げ、多額の損失を見積もりました。フィンテック企業ローンチパッドキャピタルのライアン・ギルバート創業者は「仮想通貨業界の信頼性が崩れた」と指摘し、業界の不安定化に拍車がかかりました。

仮想通貨市場の暴落の概要

FTXの倒産で相場は過去最大級の暴落を迎えましたが、仮想通貨価格の長期的な低下要因は、他にも数多くあります。一部の専門家は、仮想通貨市場が暴落する最初の兆候は、2022年の春・秋に現れたと指摘しています。前述のとおり、テラやボイジャー、ブロックファイ(BlockFi)など、仮想通貨業界を席巻していた革新的なプロジェクトがすべて失敗に終わった時期です。「多くの仮想通貨プロジェクトが見た目ほど信頼に足らない」と投資家が認識する中で、不安が大きくなりました。

さらに、高金利下で、通貨の価格が下落し始めたのです。FRBが金利を引き上げてインフレを抑制する中で、仮想通貨の価格は勢いをなくし、下落しました。自由に投資できる手元資金が少ない中、著名投資家も仮想通貨市場にほとんど資金をつぎ込めませんでした。

その他、連邦政府による仮想通貨の取り締まり強化もマイナスに働きました。仮想通貨の人気が高まるに伴い、当局の規制対象から外れるのが困難になったのです。米国証券取引委員会(SEC)が仮想通貨の違法な宣伝でキム・カーダシアンを告発するなど、大きな事件が複数発生し、仮想通貨市場に対する大衆の信頼感が失われていきました。最終的に、上記の要因が重なり、仮想通貨の価格は大幅に低下しました。2021年以降、仮想通貨市場の合計時価総額は半分以下になりました

足元の仮想通貨市況

冬の時代を経て、仮想通貨市場は今、どのような状況でしょうか? 今のところ、あまり持ち直してはいません。合計時価総額は3兆ドル付近でしばらく推移しましたが、2022年後半には8千億ドル付近まで大幅に下落しました。2023年初頭に合計時価総額が1兆ドルを再び超えて、その後はおおむね1兆~1.3兆ドルのレンジで推移しています。足元の合計時価総額は、1.22兆ドルです(2023年7月10日)。

市場全体はおおむね低水準の価格で安定していますが、個々の仮想通貨には注目に値する動きがあります。主な仮想通貨プロジェクトを紐解けば、仮想通貨市場の特徴的なトレンドもいくつか見えてきます。

  • ビットコイン:ビットコインは2022年後半に15,000ドル付近のきわめて低水準な価格に達しました。2023年3月と6月初旬に大幅に下落しましたが、2倍近くまで上昇し、30,000ドル付近に達しました。足元の価格は、30,512ドルです(2023年7月11日)。

  • イーサリアムイーサリアム価格は2022年後半に、1,000~1,300ドルのレンジでおおむね推移しました。その後は大きく持ち直し、現在は1,883ドルです(2023年7月6日)。2023年は、ビットコインよりも安定した値動きを見せています。

  • リップルXRPの変動は、最近激しくなっています。2023年初頭だけで0.34ドルから0.52まで上昇し、足元では0.47ドルです(2023年7月11日)。さらなる変動も予想されています。

  • リド(Lido)のイーサリアムステーキングstETHはイーサリアムと深く関連しているため、その価格変動もおおむね似通っています。2022年後半には1,000ドル付近でしたが、足元ではおよそ1,882ドルです(2023年7月11日)。

  • カルダノ:仮想通貨が暴落して以降、ADAの価格は低迷しています。2022年11月に他の仮想通貨が下落した際にはおおむね安定していましたが、12月後半は0.25ドルまで大幅に下落しました。数ヶ月にわたり0.40ドル付近で推移した後、2023年6月に大幅に下落し、足元では0.29ドルです(2023年7月11日)。

  • ドージコイン:他の多くの仮想通貨と異なり、ドージコインの価格は2022年11月に急騰し、0.14ドルの値を付けました。その後は下落基調にあります。足元(2023年7月11日)では、おおむね0.06ドルのレンジで推移しています。

  • ライトコインライトコインは、2022年の暴落後も好調に推移する数少ない通貨です。50から100ドル付近で堅調な伸びを見せています。2023年7月11日の価格は、97.40ドルでした。

仮想通貨が反発する要因とは?

ご覧のとおり、2022年に仮想通貨が冬の時期を迎えた要因は、多岐にわたります。当時の暴落には複数の要因が影響しており、その弱気相場が一夜にして消え去ることはないです。仮想通貨業界が真の回復を成し遂げるには、以下に示す複数の条件を満たす必要があります。

仮想通貨の利用拡大

2020年の強気市場入りでは、一部の国々で仮想通貨を正式な通貨として承認する動きが好材料と見なされました。仮想通貨の用途が投機の枠を超える中、価格も上昇し始めたのです。人気のPlay-to-Earn(プレイして稼ぐ)型の仮想通貨アプリや実効性に富むDeFiレンディングプラットフォームはすべて、仮想通貨業界の成長を支える存在です。

金利の低下

足元の金利上昇は、仮想通貨市場が下落している主な要因の1つです。金利が上昇すれば、仮想通貨相場必ずと言っていいほど下落します

金利の上昇は、市場に不透明感をもたらすだけでなく、投資家の資金調達も難しくします。多くの投資家は、仮想通貨市場から資金を引き揚げて、ボラティリティの低い投資先に振り向けます。これらの投資資金が仮想通貨市場にすべて戻ってくるには、金利が再び下落に転じる必要があります。

政府規制の透明性向上

仮想通貨投資において、規制は必ずしも悪いものではありません。適切な規制が敷かれれば、怪しい仮想通貨企業が誇大に宣伝して実際には未達に終わるなどの問題も解決しやすくなります。ただし、どこからともなく規制が課されて、仮想通貨業界の一部のみが規制対象になれば、不確実性が高まって価格の下落を招きます。この問題を解決する唯一の方法は、仮想通貨の投資家が信頼できる明瞭な規制を敷くことです。規制環境が安定すれば、価格の下落を防ぐ一助になるでしょう。

いつ仮想通貨市場は持ち直すのか?

結局、大半の専門家は、仮想通貨市場が今後成長すると予想しています。弱気相場の後には強気相場が必ず来ます。市場は必ず循環するので、上昇に転じるわけです。しかし、いつ成長が訪れるのかを予想するのは困難です。

2023年の市況を見るに、すでに回復し始めています。下落相場はおおむね終わり、安定相場入り、または徐々に上昇相場の様相を見せています。また、住宅ローン金利の上げ幅縮小や仮想通貨企業の破産件数の減少など、他の好ましい兆候も出ています。

楽観的な見通しによると、仮想通貨市場は2023年後半までに立ち直ります。2021年の価格水準まで急騰することはないでしょうが、大幅な上昇の可能性は残されています。

ただし、SECによるバイナンスとコインベースへの提訴などの影響により、不透明感が根強い点に留意してください。そのため、保守的なアナリストは、2024年中ごろまで市場は回復しない可能性があると見ています。上記の説明は推測の域を出ない点に注意してください。仮想通貨のボラティリティは高いので、仮想通貨などの資産に投資する前には、必ず自分で調査しましょう。

おわりに

2022年に仮想通貨が冬の時期を迎えたからといって、仮想通貨が未来永劫まで下落するわけではありません。仮想通貨の世界は常に、上昇と下落を繰り返します。そして、すでに価格は戻り始めています。2021年の最高値を付けるまでに時間はかかるでしょうが、「直近でさらなる急落を迎えることはない」と大半の専門家は予想しています。仮想通貨の投資家は、来年中に多くの仮想通貨がゆっくり着実に上昇すると予想して良いのではないでしょうか。