ビットコインの未来予想(2023)
これまで一部のファンにしか知られていなかったビットコインを始めとした暗号資産は、ここ数年で世間一般からも広く認知されるようになりました。現在、暗号資産の種類は2万種類を超え、この数は今後もさらに増えると予想されます。ビットコインの誕生から早十年、ビットコインはどんな未来を迎えるのでしょうか?
いきなり結論から入りますが、これだけははっきりと言えます。「ビットコインの未来は明るい」。ビットコインは数ある暗号資産の中でも世界最大の時価総額を誇っており、今後ほかの暗号資産がビットコインからトップの座を奪い取るのは至難の業でしょう。果たしてビットコインはどこまで大きくなるのでしょうか?ビットコインは世界を支配するのでしょうか?その答えはまだわかりませんが、いくつかの明るい見通しが立てられています。
この記事のポイント
ビットコインは2024年4月に半減期を迎えます。これによってBTCはさらに希少になり、その価格は過去最高水準に達する可能性があります。
現在最も市場を支配している暗号資産はビットコインですが、イーサリアムやSuiなど、多種多様な暗号資産がビットコインのライバルとして登場しています。
ビットコインの歴史
2009年は金融業界にとって悪夢の年でした。信用収縮と2000年代後半の世界的な景気後退によって市場は暴落し、世界中が悲観ムードに包まれました。
信用収縮が起こった原因は複数ありますが、ここで議論するまでもなく、この一連の出来事によって伝統的な銀行システムに対する信頼が崩れ落ちたことは間違いありません。英タイムズ紙は2009年1月3日付の記事で、「銀行に対する2度目の救済措置をする可能性がある」とイギリスのアリスター・ダーリング元財務大臣が発言したと報じました。
10年以上経った今、この記事を振り返ってみると、一見何の変哲もない、当時の金融業界が陥っていた混乱を取り上げただけの記事に思えるかもしれません。2009年1月3日は土曜日で、当時のタイムズ紙の新聞は通常価格の1.50ポンド(約2ドル)で販売されていました。こちらのウェブサイトでは、その日以降のすべての新聞のコピーがリストアップされています。そのウェブサイトによると、現存している当時の新聞は7部のみで、保存状態の良い新聞は130万ドルという高値で取引されています。さて、ここでビットコインの話に戻ります。一体この記事はビットコインと何の関係があるのでしょうか?
ジェネシスブロック(最初のビットコイン)
一般的な金融業界が2009年の出来事をネガティブに捉えているのとは対照的に、暗号資産業界はまったく異なる捉え方をしています。その理由はもちろん、2009年にビットコインが誕生したからです。2009年1月3日、サトシ・ナカモトという匿名の人物が50ビットコインをマイニングし、世界初の暗号資産がこの世に誕生しました。
一番最初にマイニングされたビットコインのジェネシスブロックには、「Chancellor on brink of second bailout for banks(財務大臣、銀行に対する2度目の救済措置の可能性を示唆)」という文章が添えられていました。この短い文章こそが、ビットコインが誕生した本当の理由です。大混乱を引き起こした中央集権型の金融システムを統括する大手銀行への不信感が高まり、世界中が大きな不安を抱えていた中、「ビットコイン」という革命児が彗星の如く現れたのでした。従来の銀行とは完全に異なる、完全に独立した分散型デジタル通貨の登場です。
この新しい通貨に対して、銀行は一切の権力も権限も持ちません。ビットコインは分散型台帳とブロックチェーン技術によって運用され、ブロックチェーン上のすべてのメンバーのコンセンサスによってすべての取引が検証されます。そしてもちろん、これは物理的資産ではなく完全にデジタルな資産です。
当時から理論的には素晴らしいアイデアであると評されていましたが、本当にビットコインは通貨として普及するのかという懐疑的な見方も多くありました。しかし、サトシ・ナカモトから最初にビットコインを受け取ったハル・フィニー氏は、サトシからビットコインを受け取った直後に次のように述べています。「新しい通貨が生まれたばかりの段階で、その価値をどう定めるかは非常に難しい問題だ。それは多くの人がその通貨をまだ受け入れていないからだけでなく、価値を評価するための明確な基準や理論が存在しないからだ」
そして一番の論点は、ビットコインが実生活でどのように使われるかという点でした。
ビットコインの普及と価値の上昇
ビットコインの次の重要な出来事は2010年に起こりました。ラズロ・ハニエツ氏が10,000 BTCで41ドル相当のピザを購入し、世界で初めてビットコインが買い物に利用されました。それ以降、その日はビットコインが実際に買い物に使われた記念すべき日として、ビットコイン・ピザ・デーというお祝いが毎年実施されています。
その後、ビットコインの人気と価値は急上昇し、2010年初頭までほぼゼロに近い数値だったビットコインの価格は2011年2月には米ドルとほぼ同等になり、その後も価格が高騰し続けたことは周知のとおりです。ビットコインのバブルは世界中で報道され、多くの人から注目を集めるようになりました。しかし、ビットコインの誕生から現在に至るまで、ビットコインは実際にどれほど実社会で活用されているのでしょうか?
BBCの記事(「Bitcoin for Dummies」の稿)には、次のような文章が掲載されています。「ビットコインに価値があるのは、人々が現実世界の商品やサービス、さらには現金と実際に交換しているからです」もちろん、2017年後半に起こった20,000ドル近くへ急騰してからの暴落や、さらに最近では2022年の暗号資産業界全体の暴落など、ビットコイン価格が非常に不安定な時期もありました。しかし、2020年後半から2021年前半にかけて、ビットコイン価格は爆発的に上昇したことは記憶に新しいでしょう。
2021年、ビットコインは4月と11月に60,000ドルを超え、史上最高値を記録しました。しかし、翌年の2022年は弱気相場となり、ビットコインや他のアルトコインにとって厳しい年となりました。2022年の最初の5か月間でビットコインの価格は2021年の最高値から50%以上下落し、さらにUSTのペッグが外れたことをきっかけにTerraのネイティブトークンであるLunaが暴落したことを受けて、5月12日には28,913ドルの安値を付けました。その他にも、FTXの破産と暗号資産市場に対する規制強化の懸念によって、この1年の間にビットコインの価格は何度も下落しました。
2023年が始まるとBTC価格はわずかに回復し、一時30,000ドルに達しましたが、そのレジスタンスレベルを破ることはできませんでした。
ビットコインの使用用途
ビットコインが登場した当初は、通貨としての長期的な持続可能性に疑念を持たれていたため、その利用はまだ限定的なものでした。しかし、徐々にその知名度が上がるにつれ、多くの事業者がビットコインを決済手段として受け入れるようになりました。2011年には、ビットコインの決済サービス・プロバイダー「BitPay」が設立されました。
ところが、当時のビットコインはマネーロンダリングやダークウェブのマーケットプレイス「シルクロード」での取引など非合法な活動でも使用されており、このことがビットコインの社会的信頼を歪めてしまったのです。
幸いにも、ここ数年のビットコインの急成長のおかげでビットコインは合法的な事業者からも広く受け入れられるようになり、昔のような悪いイメージは薄れつつあります。
ビットコインの導入例
2023年時点でビットコインを導入している主な企業として、Tesla、PayPal、Microsoft、KFC、Subway、Shopify、Home Depotなどがあります。さらに、暗号資産投資に参入する機関投資家や大口の投資家(クジラ)も増えてきています。また、2021年の初めには多くの著名な投資家がビットコインを購入するようになり、ビットコインはますます価値のある通貨と見なされるようになりました。
この空前の買い圧力により、ビットコインの価格は上昇しました。Cointelegraphは2021年3月に、「機関投資家がマイニングされる量よりも多くのビットコインを毎月購入しており、ビットコインの供給量が足りていない」と報道しました。今後もビットコインの需要が高まるにつれてビットコインの希少性も高まるでしょう。特に2024年4月に予定されているビットコインの半減期では、それが顕著に起こると予想されています。
ビットコインの未来
将来有望なビットコインですが、将来的に通貨として普及するかどうかはいくつかの要因に左右されると考えられます。まず一つは、暗号資産のボラティリティの高さの問題です。通貨として採用されるためにはこのこの点を克服する必要があります。暗号資産の価値が下落するリスクが高い場合、事業者は暗号資産を決済手段として導入することに対して消極的になってしまいます。一方で、ビットコインの将来的な値上がりを期待している人々にとっては、日用品を購入する目的でビットコインを手放したくないと思うかもしれません。
規制の導入
ビットコインは分散型金融であるため、規制という概念はビットコインの本質と相反するように思えるかもしれません。しかし現実的には、ビットコインが普及するためには規制の導入が不可欠です。韓国や日本のように、ビットコインを始めとする暗号資産の規制ガイドラインを率先して提供している国もありますが、世界の多くはまだ遅れています。
多くの国ではビットコインの法的な位置づけはまだ不透明ですが、規制の枠組みを導入する政府が今後増えれば、ビットコインは国際的な資産として普及するようになるでしょう。
さらに、暗号資産の安全性とセキュリティへの懸念の高まっている昨今は、暗号資産取引の匿名性の高さがデジタル通貨の導入に向けた大きな課題となっています。その一方で、Bybitをはじめとした大手の暗号資産取引所では本人確認(KYC)の導入が進んでおり、これによって各国の規制を遵守した安心安全のプラットフォームを提供しています。
利便性の高さ
残念ながら現在のビットコインは法定通貨と同じような利便性で買い物に使用することはできません。カード決済の普及や現金使用の減少、ApplePay(中国のWeChatPayやAlipayなど)のような決済アプリの登場など以前より電子決済の利便性は改善されましたが、依然としてビットコインを利用した決済は多くの人にとって難易度が高いという問題があります。
特に、ホットウォレットとコールドウォレット、パブリックキーとプライベートキーなど、その複雑な仕組みが一般人にとって大きな障壁となっています。今後の課題として、暗号市産業界はビットコインをさらに大衆に普及させる方法を見つける必要があります。
このような問題の解決策の1つとして、サードパーティのプラットフォームを通じてビットコインをより多くの一般層に普及させるという方法が挙げられます。例えば、3億2,500万人の利用者数がいるPayPalは暗号資産の販売機能を導入する予定です。このような大手決済プロバイダーが暗号資産を導入することで、暗号資産をさらに大衆向けに普及できる可能性があります。
VisaとMastercardも暗号資産決済の導入を発表しており、今後も決済プロバイダーがこの業界に参入すると予想されます。
ブロックチェーンのトリレンマ:スケーラビリティ問題
ビットコインの重要な問題の一つに、スケーラビリティ問題があります。ビットコインの新しいブロックは約2,700件のトランザクションを処理できる一方(10分ごとに1つのブロックが追加)、Visaは1秒あたり2,000件のトランザクションTPS)を処理できます。したがってビットコインが競争力を高めるためには、スケーラビリティを向上する必要があります。この問題はブロックチェーンのトリレンマとして知られており、いくつかの解決策が提示されていますが、このではその1つとして「SegWit」をご紹介します。
SegWitのソフトフォークは、トランザクションデータからデジタル署名を分離することにより、ネットワーク上のトランザクションを処理する能力を向上させます。最終的にはライトニングネットワークなどと同じように、SegWitもビットコインネットワーク上で1秒あたり数百万件のトランザクション処理が可能になると期待されています。2017年8月の公開以来、その使用率は着実に増加しています。
ビットコインネットワークにおけるSegWitの使用状況。出典:Blockchair
デジタルゴールド
一部の専門家は、ビットコインがデジタルゴールドであると主張しています。しかし、これは本当でしょうか?確かにビットコインは金と同じく供給量が限られており、どちらの資産も価値の交換手段として使用できます。しかし、ビットコインが金と同じように価値の保存手段として機能するかどうかは議論の余地があります。
歴史的にも、金はそのボラティリティの低さから価値を保存できる信頼度の高い資産として重宝され、安全資産として利用されている一方で、ビットコインは投機目的で利用されています。しかし金との類似性から、一部の金融アナリストはビットコインがいずれ金と同じ地位を獲得する可能性があると予想しています。
ビットコインの価格予測
2023年6月12日現在、ビットコインの価格は25,790ドル、時価総額は5,000億ドルとなっています。この価格は、2021年11月の最高値69,044ドルから62%下落、2013年7月の最安値67.81ドルから37,000%以上上昇しています。
ビットコインの価格予想については長年にわたってさまざまな憶測がありますが、一部のアナリストは非常に強気な見通しを立てています。
Bitnationのアナリストによると、ビットコイン価格は2025年に最高98,090ドルに達し、2030年には227,155ドルまで上昇すると予想されています。PricePredictionのアナリストもビットコイン価格について強気な予想をしており、2025年に77,030ドルに達し、2030年には496,845ドルまで上昇すると予測しています。
では、2030年のビットコイン100ドル分の価格はいくらになるのでしょうか?ARK InvestのCEOであるCathie Wood氏の予想によると、もし2030年までにビットコイン価格が100万ドルに達した場合、現在100ドルで0.00388 BTC(現在価格1 BTC = 25,790ドルで算出)を購入しておけば、そのビットコインは3,900ドルまで成長します。つまり、7年間で約3,800%の利益を得られることになります。
2022年12月~2023年6月までのビットコイン価格チャート。
これはあくまでビットコイン価格の強気な見通しの一例であり、金融アドバイスではありません。ビットコインをはじめとした暗号資産を購入する前に、独自に調査することを強く推奨します。
ビットコインのライバル候補
ビットコインはその誕生以来、暗号資産ランキングの頂点に君臨し、時価総額で1位を維持してきました。しかし、手数料の高さや取引速度の遅さなどビットコインには多くの課題があることから、ビットコインのライバルも増えてきています。投資家から注目されているビットコイン以外の暗号資産には、以下のようなものがあります。
イーサリアム(ETH)
ビットコインのライバルとして一番に名前が挙がるのはイーサリアムでしょう。イーサリアム・ブロックチェーンのネイティブトークンであるETHはここ数年で大きく成長し、非常に高い人気を誇っています。イーサリアムのエコシステムは低いガス代と高速トランザクションを実現するために、継続的なシステムアップグレードに取り組んでいます。
イーサリアムが最近実施した最も重要なアップグレードには、プルーフ・オブ・ワーク(PoW)からプルーフ・オブ・ステーク(PoS)へコンセンサスアルゴリズムを変更した「The Merge」があります。さらにイーサリアムのもう一つの重要なアップグレードとして、2023年4月のイーサリアム上海アップグレードがあります。このアップグレードにより、ビーコンチェーンからのETHの払い戻しが可能になりました。
ETHは時々ビットコインよりも優れたパフォーマンスを示すことがあり、これを暗号資産の投資家たちはアルトシーズン(アルトコインが上昇する時期)の兆候とみなしています。また、イーサリアムは継続的にアップデートを行っているため、ビットコインよりも価値貯蔵資産として優れているという見方もあります。
SingularityNET(AGIX)
現在世界で流行している人工知能(AI)はブロックチェーン技術にも進出しています。SingularityNETは、AIとブロックチェーンの融合を目指す代表的なプラットフォームの1つです。Sophiaという人間型ロボットを開発したHanson Roboticsが構築したSingularityNETは、AIとブロックチェーンの融合に関して大きな可能性を秘めています。SingularityNETのネイティブトークンであるAGIXは、AI銘柄の暗号資産の中でも上位にランクインしています。
SingularityNETのプロジェクトは分散型AIマーケットプレイスを構築し、汎用人工知能(AGI)をオープンソース化することを目指しています。AIが世界を席巻し続ける中、SingularityNETプラットフォームにおけるAGIXトークンのユーティリティとしての活用によって、AGIXトークンの爆発的な上昇が起こる可能性があります。
Sui(SUI)
最近新しく登場したレイヤー1ブロックチェーンのSuiは、高速かつ安全なプラットフォームを開発することで、スマートコントラクトの実行レイテンシーを大幅に短縮することを目指しています。2023年に最も期待されるプロジェクトとして登場したSuiは、web3とその関連プロダクトの普及を促進する大きなきっかけになると考えられています。
Mysten Labsによって開発されたSuiは、以前Meta社で開発中止となったデジタルウォレット「Novi」の主要開発チームから支援を受けています。
Suiは、開発者がコードを気にすることなくクリエイティブな開発ができるという特徴があります。SuiブロックチェーンのネイティブトークンであるSUIはステーキングとガス代の支払いに使用されます。革新的なプロダクトと活気のあるエコシステム、そして優秀なチームから支援を受けているSuiは将来有望な暗号資産の一つと言えます。
Mantle
Mantleはイーサリアムの安全なアーキテクチャ上に構築されたレイヤー2プロジェクトです。分散型シーケンサーを使用してセンサーシップを減らし、オプティミスティック・ロールアップ技術でトランザクションを一括処理することで、低い手数料を実現しています。
Mantleのエコシステムは、分散型自律組織(DAO)のBitDAOによって管理されています。BITトークンをMNTにブランド変更する提案が可決され、2023年第2四半期にはメインネットの立ち上げが予定されています。将来的にはMantleの利用が拡大すると予想されます。
おわりに
暗号資産業界で世界最大の知名度を誇るビットコインは、これからもこの業界の主役として君臨し続けるでしょう(市場の占有率は初期の頃よりも低くなっていますが、それでも2017年のバブルの頃よりも高い水準を維持しています)。
しかしビットコインがもっと世の中に普及するためには、いくつかのハードルを越えなければいけません。日常的な決済手段にビットコインを使用するという考えそのものが一般の人々にとってはまだ理解されにくいため、暗号資産業界はこの問題を解決する方法を模索する必要があります。
PayPalのような企業が暗号資産を決済手段として導入すれば、さらに暗号資産が一般層に普及する可能性があります。また、スケーラビリティの問題も克服する必要があります。
このように、ビットコインの未来がどうなるかはまだわかりません。いくつかの課題はありますが、一方で前向きな見通しもあります。きっとエキサイティングな暗号資産の未来が私たちを待っているはずです。