今週のマクロ経済:重要な経済指標の発表と景気後退懸念
米国の景気後退や世界貿易戦争への懸念から、仮想通貨(暗号資産)市場や株式市場はこの1ヶ月で大幅に下落しました。トランプ政権の政策によって米国経済が「移行期間」を迎え、金融市場はボラティリティと不確実性の高まりを特徴とする「デトックス期間」に突入しています。そのような中、2025年3月14日までに多くの米国経済指標が発表されることから、今週は投資家にとって非常に重要な1週間となります。
この記事では、金融市場や仮想通貨価格を左右する主要なマクロ経済動向についてBybit(バイビット)が紹介します。この記事を読めば、今週発表される経済指標のうち、どの指標に留意すべきかについても把握できるでしょう。
この記事のポイント:
仮想通貨価格は過去30日間で大幅な下落に見舞われ、合計時価総額は15%を超える減少となりました。
米国の景気後退や世界貿易戦争への懸念が広がる中、ナスダック100指数が2025年3月10日に過去3年間で最大の下落率を記録するなど、株式市場も急落しました。
今週注目すべき主なマクロ経済指標には、近く発表されるコア消費者物価指数(CPI)やコア生産者物価指数(PPI)などがあり、投資家はインフレ動向について詳しく把握できる可能性があります。
今週注目のマクロ経済イベント
株価や仮想通貨価格が下落し、市場に不確実性が広がる中、今週は3月10日から14日にかけて多くの主要経済指標が発表されるため、投資家にとって重要な週となります。
今週最注目のマクロ経済イベント:
2025年3月11日に発表された米雇用動態調査(JOLTS)によると、1月の新規求人件数は23万2,000件増加し、総求人件数は774万件となりました。これは労働市場の底堅さを示しており、インフレや金利見通しに影響を与える可能性があります。
2月のコア消費者物価指数(CPI)は2.8%で、事前予想の2.9%をわずかに下回る結果となりました。これは消費者物価の上昇がわずかに落ち着いていることを示唆しています。生産者価格指数(PPI)は、市場予想の0.3%上昇に対して0.0%と横ばいになり、昨年7月以来のコアPPIの下落となりました。これは卸売りレベルでの価格圧力が和らいでいることを示唆しています。そのような予想を下回る経済指標の発表を受けて、市場には楽観的な見方が広がりました。米連邦準備制度理事会(FRB)がよりハト派的なスタンスに方向転換し、政策金利を据え置くか、経済成長が鈍化した場合は2025年後半に利下げを実施する可能性があります。しかし、トランプ大統領が提案する関税は引き続き不確実性をもたらし、株式市場は不安定な状況が続いています。
仮想通貨市場の急落
年初は好調な滑り出しとなった仮想通貨市場でしたが、2月初旬以降は大幅に下落しています。2025年3月12日現在、仮想通貨の合計時価総額は、過去7日間で6.6%下落しました。過去30日間では15.24%の下落です。
主要な仮想通貨の価格変化率は以下のとおりです。
ビットコイン:-6.09%(7日間)、-15.69%(30日間)
イーサリアム:-13.56%(7日間)、-27.64%(30日間)
ソラナ:-13.75%(7日間)、-39.53%(30日間)
この市場急落を受けて、直近24時間で合計4億463万ドル相当もの多額の換金が発生しました。さらに、仮想通貨の「恐怖と貪欲指数」(Fear & Greed Index)は、2025年2月25日以降、「恐怖」と「極度の恐怖」の間で乱高下しています。投資家が仮想通貨を売却したいという思いになり、デジタル資産価格が下落していることの表れです。
米国株式市場の下落
直近で大幅な下落となった資産クラスは、仮想通貨だけではありません。実際のところ、仮想通貨急落の主因は世界的な市場混乱です。この混乱は、過去数週間における株式市場の下落の引き金ともなりました。
主要株価指数であるS&P 500(GSPC)、ナスダック100(NDX)、ダウ工業株平均(DJI)は、過去30日間でそれぞれ8.18%、10.94%、7.09%下落しました。さらに、NDXは2025年3月10日に24時間で4%下落し、2022年以来で最大の下落率となりました。また、「マグニフィセント・セブン」銘柄は直近1ヶ月間で以下のとおり急落しています。
Apple Inc.(AAPL):-5.06%
Microsoft Corporation(MSFT):-7.53%
Alphabet Inc.(GOOG):-11.27%
Amazon.com, Inc.(AMZN):-15.54%
Meta Platforms Inc.(META):-15.85%
Tesla Inc.(TSLA):-29.81%
NVIDIA Corporation(NVDA):-18.10%
トランプ関税と景気後退懸念
しかし、なぜ仮想通貨と米国株式はこの1ヶ月間で大幅に下落したのでしょうか。その答えは、米国経済が景気後退に向かっている可能性を警告するような情報が新たに示されたからです。さらに、ドナルド・トランプ大統領の関税政策が世界貿易戦争につながりかねないという懸念を投資家は抱いています。
トランプ大統領は2025年1月20日の就任以来、米国への鉄鋼・アルミニウムの輸入に一律25%の関税を導入しました。さらに、カナダ、メキシコ、中国本土に対し追加関税を課す国別措置を導入し、各国が米国に対する報復措置を発動する事態となりました。
また、トランプ政権は、連邦政府からの助成金を凍結し、連邦政府職員を削減し、政府機関の粛清などの措置を実施することにより、米国の政府支出を大幅に削減しています。これらの政策は、貿易戦争勃発の可能性と相まって、短期的に市場のボラティリティと不確実性を高めています。
トランプ大統領はこれを移行期と呼び、金融市場には短期的な痛みが生じると警告しました。スコット・ベッセント米財務長官によれば、これらの動きには経済をリバランスする狙いがあり、「デトックス期間」に入る可能性があります。
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