イーサリアム上海アップグレード:ETH価格上昇の可能性を徹底考察
2022年9月15日のイーサリアムMerge完了後、多くの暗号資産の投資家たちがイーサリアムの次のアップグレードに注目しています。当初のスケジュールでは、イーサリアムのMerge以降のアップグレードは、Surge、Verge、Purge、Splurgeの順に行われる予定でした。ところが最近になってイーサリアムのコア開発者たちは、当初のロードマップ計画に新しいアップグレードを追加することを発表しました。
イーサリアム上海アップグレードと名付けられたこの計画では、EIP-4844の提供開始前に、遅延を最小限に抑えるためのいくつかのイーサリアム改善提案(EIPs)が実施される予定です。この記事では、イーサリアム上海アップグレードで実施される改善提案の内容と、それが今後のイーサリアムにどのような影響を与えるのか解説します。
イーサリアム上海アップグレードとは?
イーサリアム上海ネットワークアップグレードとは、イーサリアムネットワークの次の大規模アップグレードである「Surge」の前段階として実施されます。イーサリアムの開発者らによると、SurgeはブロックチェーンのTPS(毎秒ごとの取引件数)を向上させるためのアップグレードであり、上海アップグレードはSurgeの準備段階で生じる遅延や問題点を最小限に抑える目的があります。
イーサリアム上海アップグレードには複数のEIP(改善提案)が予定されていますが、EIP-4895:Beacon Chainの出金機能(Beacon Chain Push Withdrawals as Operation)という改善提案が最初に実施される予定です。この提案によって、バリデータはBeacon Chainが導入された2020年12月以降にBeacon ChainでステーキングされたETHを出金できるようになります。最終的には、2年以上ETHのステーキングを行うと、ごくわずかなガス代でETHの出金が可能になり、さらに流動性が追加されます。
EIP-4895の他にも、イーサリアム上海アップグレードで実装が予定されているEIPは下記のとおりです。
- EIP-3860:境界とメーター初期化コード(Limit and Meter Initcode):この提案では、初期化コードの最大サイズを49152に制限し、さらに32バイトチャンクごとに余分な2ガスの適用を実施します。これにより、イーサリアムのガス欠によって処理が中断される問題がほぼ解決されます。
- EIP-3855:PUSH0命令(PUSH0 Instruction):このEIPは、スマートコントラクトのサイズを縮小し、コントラクトコードを最適化するのに役立つEVM用の新しい命令を提案します。
- EIP-3651:ウォームコインベース(Warm COINBASE):某暗号資産取引所と名前が同じですが全くの別物です。この提案はブロックの構築を安くし、ビルダーと提案者を分離します。これにより、ネットワーク参加者のガス代が削減されることに加え、ビルダーを使用して複雑な取引を実行するトレーダーは、失敗した取引の代金を支払う必要がなくなります。
投資家はいつステーキングしているETHを出金できるのか?
イーサリアムの開発者によると、現在第1四半期での公開を予定しており、上海パブリックテストネットは2023年2月に開始される見込みです。現在の開発スピードで進行した場合、2023年3月に公開予定となっているため、開発は順調に進んでいるようです。
イーサリアム上海アップグレードが注目されている理由
イーサリアム上海アップグレードがSurgeアップグレードの単なる準備工程であるとすれば、なぜこれほどまでに上海アップグレードが話題になっているのか疑問に思う方もいるのではないでしょうか。その理由を考える前に、まずはMerge実施後にイーサリアムコミュニティで何が起こったかを振り返りましょう。
ETHのステーキングに関する問題
EIP-4895の実装以前は、ETHステーキングに参加する方法は限られており、年間利回りを獲得するために、ETHを一定期間ロックしなければなりませんでした。また、その検証プロセスの一環として、参加者は最低でも32 ETHのステーキングを行う必要がありました。
ただし、利用可能な資金が少ない参加者には、ステーキングのプロセスが合理化されたステーキング・アズ・ア・サービス(Staking as a Service)オプションまたはプールステーキング(Pooled Staking)が用意されており、個人投資家でもETHのステーキングを利用できたのです。ETHのステーキングが個人投資家にとっても簡単で便利なものになったため、それに伴って、Stakewise、Lido、Rocket Poolといったステーキングプラットフォームが人気を集めるようになりました。
ETHのステーキングは、流動性を低下させ、カウンターパーティーリスクに晒されるというデメリットがありましたが、一方で利回りが稼げるというメリットもありました。当時はステーキングしたETHを出金できなかったものの、多くの投資家はイーサリアム財団の言葉を信じ、ステーキングしているETHはいつか必ずBeacon Chainから出金できるようになると信じていたのです。
ETHに関するFUDが発生するもすぐに解決
Mergeの実装に伴い、イーサリアム財団はBeacon ChainからETHを出金解禁時期に関する大まかなスケジュールを公開しました。ところが、イーサリアム上海アップグレードの正式な公開日について開発チームが曖昧な回答をしたため、全体のスケジュールは不透明なままだったのです。これが原因でイーサリアムに関するFUDが発生し、イーサリアム財団は非難を浴びることとなりました。
現在、開発チームは当初の予定通りスケジュールを進めており、多くの投資家は胸をなでおろしているようです。また、2022年10月にShandongテストネットが実施され、上海関連のEIPが問題なく実行できたこともあり、投資家たちが抱いていたラグプルの懸念も払拭されました。現在ステークされているETHのレベルは1600万に近づいており、イーサリアム上海アップグレードによって実装予定の出金機能のおかげで、ETHのステーキングは今後さらに増えると予想されます。
ETH価格は上昇するのか?
予想されるETH価格の上昇理由
今回のアップグレードに伴うETH価格の推移を議論する際、ステーキングが重要な論点となります。強気予想としては、上海ネットワークアップグレードの実施によってETH普及率が上昇し、それに伴いより多くの投資家がETHをステーキングしてガチホするのではないかと考えられます。これまでETHを出金できないことを懸念していた人々が、流動性の低下というデメリットなしに利回りを得られるようになるため、イーサリアムのステーキング率が上昇するというものです。これに関連して、大口の機関投資家も流動性が保証された5%程の高額な年間利回りを求めて、ETHを購入し、ステーキングを始めると予想されるため、ETHの価格上昇は大いに期待できます。
今回のイーサリアム上海アップグレードでは、ガス代の値下げから取引の失敗リスクの軽減まで、利用者や開発者の頭を悩ませてきたさまざまな問題が改善される見込みです。大規模アップデートであるEIP-4844:プロト・ダンクシャーディング(Proto Danksharding)の実装前に、これらの問題の改善を行うことで、イーサリアム財団はSurgeアップデートに向けてスムーズに準備を進めようとしています。
予想されるETH価格の下落理由
弱気予想としては、Terra LunaとFTXの件による暗号資産市場全体の落ち込みはまだ完全に危機を脱したわけでなく、今後さらに影響が及ぶ可能性が考えられるという見方です。また、米国のインフレ率が依然として目標の2%に遠く及ばず、FRBが利上げを継続していることから、マクロ経済的な要因も懸念されています。これらの要因によって、2020年12月からETHをステーキングしていた人々がETHを売却することで流動性が高まり、弱気相場の間、ポートフォリオ内の資産を他の資産に変えるために売り圧が発生する可能性が考えられます。
これを想定して、イーサリアム財団は1日に出金できるETHの上限を約4万ETHに設定しました。これにより、ETHの売り圧が緩和され、ETHの短期的なボラティリティが低減すると期待できるでしょう。
イーサリアム上海アップグレードの進捗
2022年後半にShandongテストネットが実施されて以来、イーサリアム上海アップグレードに向けた多くの経過報告があり、イーサリアム財団は3月のネットワークアップグレードのロールアウトにむけて順調に進めていることがわかります。
経過報告によると、まずチームはブロックチェーンをコピーしてシャドーフォークを作成し、別々の環境で新しいEIPをテストするための初期段階を完了しました。このシャドーフォークは、人気のノードソフトウェア「Geth」という実行クライアントを使用していたイーサリアムノードの小さな不具合を直ちに発見しました。
最新の経過報告には、Zhejiangテストネットの実施に関する報告が含まれています。これはShandongテストネットに取って代わる役割を果たします。なぜかというと、Shandongテストネットには、EVMオブジェクト・フォーマット(EOF)を含む複数のEIPが予定されていましたが、時間とリソースの制約から、上海のネットワークアップグレードでは実装されないことになったからです。
つまり、最新のZhejiangテストネットは、イーサリアムネットワークを同様の負荷に置いて、より正確な環境におけるステーキングされたETHの出金テストを実施する予定です。ネットワーク攻撃のシミュレーションやストレステストに晒されても、ステーキングされたETHの出金が滞りなく行われるのが理想です。イーサリアム財団の開発者であるParithosh Jayanthi氏にはZhejiangテストネットについて、「すべてのツールにとって、引き出したい情報をどのように収集、表示、使用したいかをテストできる絶好の機会」であると語っています。
Zhejiangテストネットは、2023年2月1日から公開予定です。これの6日後、上海+カペラテストネットはepoch 1350にて公開を予定しています。このタイミングで、利用者はバリデータを預け、Boneh-Lynn-Shacham(BLS)デジタル署名の変更を実行し、リスクを負わずにステーキングを終了できるようになります。また、0x00のクレデンシャルを0x01に変換したり、バリデータを終了する際に部分出金および全額出金をテストしながら出金アドレスを設定することも可能になります。
イーサリアム上海アップグレードで利益を得る方法
イーサリアム上海アップグレードによる短期的なボラティリティから利益を得たいという方も多いかもしれません。ここでは、ETH価格が上昇した場合に、ETHをロングする方法について解説します。
おすすめの強気戦略:ストップ・マーケット・レバレッジ・ロング注文
ステーキングしたETHの出金が可能になることを踏まえ、多くの長期投資家がETHを購入するだろうと強気の見通しを立てている方には、BybitのレバレッジトークンETH3L/USDTを購入し、ストップ・マーケット・レバレッジ・ロング注文を活用する戦略をおすすめします。
この取引を行うには、Bybitでアカウント開設をした後、Bybitの現物取引プラットフォームにアクセスしてETH3Lトークンを検索します。取引画面を開いたら、注文の種類をストップ・マーケットに変更してください。このタイプの成行注文は、損切りで最大損失を制限しながら、短期的に収益を増やすのに役立ちます。
ETH戦略の取引方法・注意点
価格レベルを設定する前に、買いと売りが強いエリアを確認しておくことが重要です。次に、サポートレベルとレジスタンスレベルに基づいて価格レベルを設定します。ある価格レベルは他に比べて強いように見えるため、個人的なリスク選好に基づいて異なる可能性があります。
Bybitの現物取引ウォレットに必要な資金を入金したら、ETH3Lレバレッジトークンのストップ・マーケット注文画面を入力して注文を送信すると取引を実行できます。
取引結果
最大利益:リバランス前のエントリー - イグジット間の差額
最大損失:イグジット - エントリー + ボラティリティ・ディケイ + 手数料の差額
Bybitの現物およびデリバティブ商品使えるおすすめの戦略をもっと知りたいという方は、下記のMerge以降のETH取引方法に関するガイドをご覧ください。
まとめ
現在、順調に進行しているイーサリアム上海アップグレードに多くの投資家が注目しています。今回のネットワークアップグレードはMergeほど大規模ではないかもしれませんが、今後のアップグレードの下準備として非常に重要な役割を果たします。
イーサリアム上海アップグレードは、ETHのステーキングの仕組みを変更することで個人投資家や機関投資家がBeacon Chainからの出金を可能にします。これにより、ステーキングに参加する投資家の数は増えるでしょう。今回のアップグレードにより、イーサリアムは有望なブルーチップ暗号資産としてさらに信用を獲得し、イーサリアム全体の未来もさらに明るくなる見通しです。今後、時価総額ランキングでイーサリアムがビットコインを追い抜き、「フリッピング」が起こる日もそう遠くはないかもしれません。