ブロックチェーンとは? そのしくみと将来性を徹底解説
暗号資産をご存知の方なら、誰しも「ブロックチェーン」という言葉を耳にしたことがあると思います。ブロックチェーンがビットコインをはじめとする様々な暗号資産の基盤技術であることは広く知られていますが、ブロックチェーン技術について詳細に理解している方は少ないかもしれません。そこでこの記事では、ブロックチェーンのしくみやその将来性について詳しくご紹介します。
ブロックチェーン技術とは?
ブロックチェーンとは、取引情報を保存する分散型デジタル公開台帳システムです。取引情報がチェーン状に連なったブロックの中に保存されるため、「ブロックチェーン」と呼ばれています。ブロックチェーン上の取引情報は、ブロックチェーンネットワークにつながっているコンピュータ同士で暗号化技術によって共有することができます。
ブロックチェーンは暗号資産の取引以外にも、ヘルスケア、スマートコントラクト、サプライチェーン、電子機器など様々な用途で使用されていますが、それらを詳しく紹介する前に、まずはブロックチェーンのしくみについて見てみましょう。
ブロックチェーンのしくみ
ブロックチェーン上のすべての情報は、ブロックと呼ばれるデジタルファイルに保存されます。これらのブロックは、どのような中央集権的組織にも所有されず、「分散型」システムで管理されています。また、ブロックチェーン技術には以下のような特徴があります。
分散型システム
分散型システムはブロックチェーンの本質であると言っても過言ではありません。2009年に誕生したビットコインは、まさにこのアイデアから生まれたものです。2008年10月31日、ビットコインの生みの親であるサトシ・ナカモト氏は、「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System(ビットコイン:ピアツーピア電子決済システム)」と題したビットコインのホワイトペーパーを発表しました。そのホワイトペーパーには、ナカモト氏が考案したブロックチェーン技術のしくみと、従来の銀行とは全く異なる新しい金融システム、つまり世界中の人々によって管理される金融システムについて記されていました。
具体的には、「完全なピアツーピアの電子決済システムによって、金融機関を介在せずにある人物(組織)から別の人物(組織)への直接的なオンライン決済を実現する」という仮説をナカモト氏は提唱していました。そのホワイトペーパーは大きな反響を呼び、2009年1月3日にはビットコイン・ブロックチェーンの記念すべきジェネシス・ブロック(最初のブロック)が作成され、世界で初めてビットコインが誕生します。これは、銀行中心主義だった従来の集権型金融システムの世界に革命を起こす出来事でした。
ノード
ノードとは、ブロックチェーンネットワークである公開台帳を通じて情報を共有するために、互いに接続するコンピュータのことです。
各ノードはブロックチェーンのコピーを保存し、そのブロックチェーン上で実行されるすべての取引を検証します。たとえ悪意のある人物がブロックチェン上のデータを改ざんをしようとしても、ブロックチェーン上のすべてのノードの情報と記録を改ざんする必要があり非常に困難なため、改ざんされる心配はほとんどありません。
これらのノードはビットコインのマイニングにおいても重要な役割を果たします。なぜなら、ビットコインには中央集権的な組織が存在しない代わりに、これらのノードがネットワーク上の取引の正当性を検証する役目を担っているためです。ノードによる検証の実施後初めてブロックがブロックチェーンに追加され、マイナーは報酬を得ることができます。現在のビットコインブロックチェーンの報酬(直近のビットコイン半減期以降)は6.25 BTCとなっています。検証に参加するノードは、一般的にプルーフ・オブ・ワーク(PoW)またはプルーフ・オブ・ステーク(PoS)のコンセンサスメカニズムを通じてトランザクションの検証に「合意」します。特にPoWコンセンサスメカニズムは、ビットコインやビットコインからフォーク(分岐)したライトコインなど、数多くの暗号資産で採用されています。
コンセンサス・メカニズム
暗号資産のコンセンサスメカニズムと言えばPoWとPoSが主流ですが、その2つ以外にも様々な種類のコンセンサスメカニズムが存在します。
PoW:マイナーたちはハッシュという複雑な計算を一番最初に解く競争を行っています。競争に勝ったマイナーは、ブロックチェーン上で新しいブロックを検証し、新しい暗号資産を報酬として受け取ることができます。
PoS:PoWとは対照的に、報酬が得られるマイナーはランダムに選ばれます。ただし、マイナーのステーキング額が高いほど、そのマイナーが選ばれる確率も高くなります。イーサリアム2.0のアップグレードでイーサリアムにPoSが実装されたのも記憶に新しいところです。
デリゲート・プルーフ・オブ・ステーク(DPoS):PoSと名称が似ていますが、PoSとは少ししくみが異なります。DPoSでは、新しいブロックをマイニングする際にコンセンサスルールが維持されていることを確認するための代表者を選出します。もし代表者が適切な仕事を行わなかった場合、次の選考で落選させられることになります。EOSなどの暗号資産はDPoSをコンセンサスメカニズムとして採用しています。
暗号化ハッシュ
暗号化ハッシュは、ブロックチェーンのセキュリティを確保するために必要不可欠なプロセスです。このプロセスでは特定のテキストデータを不可逆的に暗号化します。もちろん暗号化した後に変更することはできません。例えば、ビットコインのブロックチェーンでは元のテキストデータをハッシュと呼ばれる64文字のテキストに変換しています。
ブロックチェーンがハッキングされる危険性は?
ブロックチェーン上のデジタルテキストは暗号化する前の元のデータに戻すことができないため、安全性が非常に高いといわれています。ただし、ハッカーがブロックチェーンネットワークの半分以上のハッシュレート(コンピュータ・パワー)を獲得しようとする「51%攻撃」を仕掛けてきた場合はその限りではありません。「51%攻撃」が成功した場合、取引のブロックや過去に検証された取引の取り消し(つまり同じ通貨を2回使用すること)が行われる危険性があります。
これまでビットコインのネットワークで51%攻撃が成功したことはありませんが、他の暗号資産では過去に被害が発生しています。例えば、2018年5月にビットコインゴールドネットワークが51%攻撃に遭い、1800万ドル相当の資産が失われるという事件が発生しました。ただし、51%攻撃を行う際に必要なハッシュパワーの量は膨大であるため、このような出来事は滅多に起こりません。ブロックチェーンのハッキングは理論上不可能ではありませんが、その可能性は非常に低いと考えられます。
ブロックチェーンの活用例
暗号資産がブロックチェーン技術を採用していることは有名ですが、その他にも様々な用途でブロックチェーン技術が活用されています。
暗号資産
上述のように、ブロックチェーンは暗号資産の本質である分散型システムを構築するための基盤技術です。このしくみによって、従来の金融機関や政府機関といった中央集権型の組織に支配されない自由な金融システムを実現することができます。最も人気の高い暗号資産であるビットコインの他にも、アルトコインやステーブルコイン、そしてDeFiトークンなど、現存する多くの暗号資産がサトシ・ナカモト氏が発明したブロックチェーン技術の恩恵を受けています。
ヘルスケア
患者の電子カルテ(EHR)から得られる機密性の高い医療データはハッキングの標的にされることが多く、身分証の偽造や、データを第三者に売却されるといった被害が発生していました。
しかしブロックチェーンによる高度な暗号化技術を活用すれば、このような問題を解決できると期待されています。カルテの記録は信頼できる安全なブロックチェーンで保管され、時間の経過とともにデータが蓄積されていきます。新しい記録を追加するにはコンセンサスが必要となるため、データのハッキングが非常に難しくなります。
Health Wizz社は、患者の医療データをブロックチェーンで管理するサービスを提供している企業のひとつです。患者はHealth Wizzの分散型モバイルプラットフォームで自分の健康情報を管理できます。また、希望すればトークンと引き換えにデータをサードパーティに販売することができます。
ただし、ブロックチェーン上で管理する電子カルテは医師が他の医療機関から来た患者の情報にアクセスする際に問題が発生する可能性があります。というのも、国によって異なるメーカーが医療機関向けに異なる電子カルテのソフトウェアを提供しているケースが多く、それらの相互運用性が確保されていないためです。これらを一つのシステムにまとめることができれば医師にとっても患者にとっても非常に便利なシステムとなりますが、一方でサービスを提供する企業が利益を出しにくいというジレンマがあります。
これまでも多くの国で電子カルテを一つのシステムにまとめようとする試みがなされてきましたが、どれも成功には至りませんでした。例えば英国では、100億ポンドの費用を使用して国民健康サービス全体を連携した患者データシステムを構築する試みを行いましたが、残念ながら2011年にプロジェクトは頓挫しました。
上記の理由から、電子カルテにブロックチェーンを導入すれば、患者情報を安全にさまざまな機関に送信し、新しいデータが追加されるとすぐにアクセスできる、患者自身がデータを一元管理できる新しい電子カルテシステムを実現できる可能性があります。
ただし、ブロックチェーンは電子カルテそのものに取って代わるものではないことに注意しなければなりません。ブロックチェーンは1秒間に7件のトランザクションを実行するのに対し、電子カルテは最大12,000件のトランザクションを実行できます。つまり速度面でブロックチェーンは電子カルテに劣ります。ブロックチェーンはあくまで電子カルテの追加レイヤーとして機能し、カルテの記録が完全で改ざんされていないことを証明したり、データ共有に関する患者の同意を記録したりする目的で使用できます。
スマートコントラクト
スマートコントラクトは通常のコントラクトと同じように機能しますが、ブロックチェーンを通じて実行されるため、サードパーティによる仲介が不要になります。また、事前に設定された条件(ブロックチェーンのコンピュータコードに設定されている)が満たされた場合にのみ、スマートコントラクトが実行されます。スマートコントラクトは2015年にイーサリアムのブロックチェーン上で初めて導入されました。現在、スマートコントラクトは多くの用途で使用されています。下記ではその一例をご紹介します。
保険
スマートコントラクトを保険に導入することで、客観的な基準で保険の審査ができるだけでなく、保険請求のプロセスを低コストで効率化することができます。従来のように弁護士に判断が委ねられている場合、判断が主観的になる上、保険金の請求プロセスがより長く、より高額になる可能性があります。スマートコントラクトを導入すれば、そのような問題を解決できると期待されます。
サプライチェーン
スマートコントラクトの活用により、サプライチェーンの管理も容易になります。保険と同様に、スマートコントラクトは主観的な判断を排除することができるため、ブロックチェーン内で設定された目標が達成されているかどうかを客観的かつ簡単に検証することができます。
特にヘルスケアの分野では、スマートコントラクトによって中間業者が不要になることでコストを大幅に削減し、米国の複雑な処方薬供給市場が改善される可能性があります。
不動産
スマートコントラクトは不動産取引にも役立ちます。特に不動産仲介業者を省くことで、不動産の購入者は物件の売主と直接取引ができるようになります。そして物件を売買する条件が整えば、スマートコントラクトを使うだけで物件の購入が完了します。
ゲーム
ブロックチェーン技術はゲーム業界でも積極的に導入されています。例えば、2017年にはCryptoKittiesというブロックチェーンゲームがリリースされました。このゲームはバーチャルな猫を繁殖させて売買するというもので、内容そのものは普通のゲームかもしれませんが、このゲームが画期的だったのはイーサリアムブロックチェーン上で動作していたことでした。
それ以降も、ゲーム業界ではブロックチェーン技術の導入が進んでいます。特にコレクション・カードゲームでは、この技術を積極的に導入してきました。その一例がGod's Unchainedで、プレイヤーはMetaMaskのようなイーサリアムウォレットを使用してコレクタブルカードをオンラインで取引することができます。
ブロックチェーンの将来性
ブロックチェーンはまだ登場したばかりの新しい技術で、今後さらに発展し普及すると考えられます。近い将来、ブロックチェーン技術がどのように発展し、どのように人々の生活に影響を与えるのかを予想してみましょう。
世界の生活水準の向上
ブロックチェーン技術を活用すれば、銀行口座を持たない人々でも金融サービスにアクセスできるようになります。これにより、貧困の解消に役立つと考えられます。
また、ブロックチェーン技術は発展途上国の中小企業に成長の機会を提供します。暗号資産の分散型システムにより、世界中の多くの中小企業が本当の意味で事業をグローバルに展開することができます。
個人認証
これはすでに導入が始まっているサービスです。ブロックチェーン技術を導入したオンライン個人認証サービスを活用する動きは今後さらに高まると予想されます。個人情報を公開分散型台帳に保存することで、身分証詐欺のリスクが大幅に軽減されると期待されます。
上述のように、ブロックチェーンは医療用電子カルテのあり方を変える大きな可能性を秘めています。これは、行政サービス、雇用、税金、さらには選挙にまで普及する可能性があります。
2020年のアメリカ大統領選挙で不正投票疑惑が話題になったことは記憶に新しいところです。ブロックチェーンは将来、そのような問題を解決する可能性があります。バイナンス社CEOのChangpeng Zhao氏は自身のTwitterで、「ブロックチェーンを利用した投票システムを利用すれば、不正に関する疑念が解消されるだけでなく、有権者のプライバシーも守られる」と主張しました。
透明性の向上
これまで述べてきたように、ブロックチェーン技術の真髄は分散型で透明性が高いことです。今後もブロックチェーンが世界に普及すれば、企業のあり方にも影響を及ぼすでしょう。情報を隠蔽することがますます難しくなり、消費者や一般市民は安心してサービスを利用できるようになります。
音楽
インターネットは音楽のあり方を変えてきましたが、それはアーティストにとっては必ずしも良いことではありませんでした。90年代後半にP2P技術を用いたファイル共有サービス「Napster」が登場して以来、音楽の違法コピーが横行するようになります。
Spotifyのような合法的な音楽ストリーミング配信サービスが登場しても、ファンがCD(さらに遡ればレコードやカセットテープ)を大量に購入していた時代に比べれば、アーティストの収入は微々たるものです。このような問題を解決するために期待されているのがブロックチェーン技術です。
ブロックチェーンの透明性によって、アーティストに支払われるべき報酬がすべて公開されます。音楽ストリーミング配信サービスは、アーティストに対して適切な報酬を支払わなければならなくなるでしょう。さらにブロックチェーン技術は、特定の楽曲の権利を誰が所有しているかを明確に示すことで、知的財産権の問題も解決できる可能性があります。
おわりに
ブロックチェーン革命はまだ始まったばかりです。ブロックチェーンは人々の従来の生活様式を変える可能性を秘めており、すでにデジタル資産として金融業界に革命を起こしています。今後数年のうちにさまざまな業界にブロックチェーンが普及し、考え方や行動に変化をもたらすでしょう。
さらにブロックチェーンの匿名性は、安全に情報を守ることができるだけでなく、情報を利用する際の利便性も高めることができます。ブロックチェーンによって、誰でも自由に情報にアクセスできるようになります。