ビットコインキャッシュとは? 投資対象としての魅力を解説(2023年)
今では、ほとんどの人がビットコイン(BTC)について耳にしたことがあり、実際に利用した人も少なくないでしょう。BTCは仮想通貨(暗号資産)を導く灯台のような存在であり、2021年前半の驚異的な急騰でかつてないほど輝きを増しました。名前の似ているビットコインキャッシュ(BCH)については、次のような疑問が当然浮かぶでしょう。「BCHはBTCと関係があるのか? またはまったく別のものか?」。実は、どちらの質問の答えも「はい」なのです。この記事では、BCHとは何か、そして有望な投資対象なのかを解説していきます。
ビットコインキャッシュとは?
ビットコインキャッシュ(BCH)は、ビットコインブロックチェーンのハードフォークにより2017年8月に誕生しました。基本的に、ハードフォークとはブロックチェーンが2つに分岐することです。分岐した後は、それぞれが独自のブロックチェーンを持つ仮想通貨になります。
ハードフォークは、分岐したブロックチェーンの一方だけが存続するアップグレードであり、ソフトフォークとは対照的です。ハードフォークが発生すると、BTCの保有者に対して、BTCと同じ数量のBCHが配布されます。
BCH誕生のきっかけは、BTCコミュニティ内における意見の対立でした。BTCのマイニング業者や開発者で構成される複数のグループは、BTCのスケーラビリティについて懸念を抱いていました。また、隔離された署名領域(SegWit)のテクノロジーを採用するというBTCブロックチェーンの計画に納得していませんでした。
これらのグループは、(BTCネットワークの規模が拡大し、取引量の増加に対応するのが困難となりつつあることから)アップグレードの必要性には同意していました。しかし、匿名のビットコイン考案者サトシ・ナカモトの提唱した分散性の哲学には沿っていないと考えていました。最終的に、スケーラビリティ問題を克服する唯一の方法はブロックサイズの上限を増やすことであるという合意が、それらのグループ内で成立しました。
結果として、BTCブロックチェーンを2つに分岐させるハードフォークが提案されました。一方のブロックチェーンは、BTCより高速に大量のトランザクションを処理できる設計になっていました。それがBCHの起源です。
ロジャー・バー氏は、BTCの価値が1ドルだった2011年に2万5,000ドルを投資したことで「ビットコイン・ジーザス」と呼ばれるようになった、有名な初期投資家です。BCHの共同考案者として、現在ではBTCよりもBCHを推奨しています。
バー氏は、2019年のフォーブス誌のインタビューで、「多くの有名企業と提携して、現実の人々や企業が実際の商取引でビットコインキャッシュを利用できるようにする」ことに取り組んでいると語っています。また、「BCHは最終的にBTCの時価総額を上回る」という興味深い予測を行っています。
ビットコインキャッシュのマイニング方法は?
BCHの背景にあるテクノロジーは、BTCとまったく同じです。BCHはブロックチェーンを持っています。これは総勘定元帳のように機能し、すべての取引を記録しています。BTCマイニングと同じく、マイニング業者は強力なコンピューターを使用して、複雑な数学的パズルを解くことで取引を検証し、新しいブロックをブロックチェーンに追加します。マイニング業者はその報酬として仮想通貨を受け取ります。2020年4月に発生した直近の半減期以降、マイニング業者のブロック報酬は6.25 BCHとなっています。
ただし、同じテクノロジーを採用しているにもかかわらず、これら2つの仮想通貨には根本的な違いが複数あります。
ビットコインとビットコインキャッシュの比較
BTCと、ハードフォークで新たに生まれたBCHとの主な違いは何でしょうか?
スケーラビリティ
BCHは、BTCのコミュニティ内でスケーラビリティ問題に関する懸念が生じたことから考案されました。現在でも、BTCネットワークは1秒あたり7取引(7 TPS)しか処理できませんが、BCHネットワークははるかに多くの取引を処理できます。この事実は、BCHの主なセールスポイントとして、ローンチ期間中に宣伝されました。当時のBTCのブロックサイズは1 MBが上限でしたが、BCHのブロックサイズは当初8 MBで、その後32 MBに増加しています。
マイニング難易度
BCHのブロックサイズが大きいということは、当然ながらマイニングにより多くの演算処理能力が必要であり、それに応じてコストも高くなることを意味します。一方で、マイニング業者が取引手数料を得る機会が増えることも意味しています。しかし、これら2つの仮想通貨における最も重要な違いは、大きな価格差です。
本稿の執筆時点(2021年3月30日)で、BTCは約5万8,000ドル、BCHは約520ドルでした。したがって、マイニング業者をネットワークに誘致するには、BCHネットワークの採掘難易度をBTCより低いレベルに維持する必要があります。それはどうやって実現できるのでしょうか? 緊急難易度調整(Emergency Difficulty Adjustment:EDA)というしくみを用います。これはBCHブロックチェーンに組み込まれたアルゴリズムで、マイニング業者の数が急変すると自動的に有効になります。
用途と適合
BTCコミュニティが分裂したもう1つの要因は、BTCが実際の通貨というよりも価値貯蔵手段として扱われていることです。たしかに、現在でも、そうした不満があることは理解できます。多くのメディアは今もなお、供給量の限られた「デジタルゴールド」としてBTCを取り上げようとします。BTC価格が今後上昇すると期待している人々が、それを物品の購入手段として使うことはないでしょう。BCHの考案者は、手数料が低く処理時間も短いBCHならば、実際の通貨としての用途についてはBTCを追い越せるというビジョンを抱いていました。理論的にはそのとおりですが、実際にはどうなったでしょう?
ビットコインキャッシュは成功したか?
ローンチ当時、BCHは改良型ビットコインとして宣伝されました。「ビットコインだけど、もっと優れたもの」というわけです。では、考案者が期待したような大成功をBCHが達成できたかというと、そうは言いにくいかもしれません。BCHの開発者はさまざまな問題に対処しなければなりませんでした。BCHの誕生からは数年しか経っていませんが、それらの問題はBCHの価格と成功を根本的に左右してきました。
ビットコインキャッシュのハードフォーク
実は、BCHにもハードフォークがあります。しかも複数あるのです。最初のハードフォークは2018年11月に実施されました。BCHブロックチェーンは分岐し、新たな仮想通貨である「ビットコインSV」が誕生しました。「SV」は「サトシのビジョン」を意味します(サトシとはビットコイン考案者のサトシ・ナカモトです)。
BTCの最初のフォークと同様に、BCHのフォークは、ブロックチェーンの方向性に関する開発者間の論争が原因でした。これは、BCHコミュニティにおける複数勢力間の「内戦」と呼ばれています。基本的に、この論争の焦点はブロックサイズでした。ロジャー・バー氏とその周辺の人々は、8 MBのブロックサイズを維持したいと考えていました。それに対して、クレイグ・スティーブン・ライト氏らは、ブロックサイズを128 MBに拡張したがっていました。
その後は半年ごとにチェーンの分岐が発生し、ネットワークがアップグレードされています。しかし、この件については、BCHの熱烈な支持者であるロジャー・バー氏でさえ不満を表明しています。スケジュールに沿った「異論の多いハードフォーク」は「大きな問題」であり、「終わってほしい」と述べています。通常、定期的なハードフォークは安定性を損ねると考えられており、仮想通貨にとってプラスになるとは見なされません。BCHの場合も、実際にそのとおりだったようです。後ほど解説するとおり、BCHの価格にも反映されています。
51%攻撃の脅威
51%攻撃の脅威は、BCHブロックチェーンのセキュリティについて疑問を投げかけました。51%攻撃は、マイニング業者のグループがブロックチェーンのハッシュ計算力の過半数を独占し、ネットワークの大部分を制御できるようになった場合に発生します。BTCネットワークについては、51%攻撃に必要なハッシュ計算力とコストが非常に大きいため、発生する可能性は小さいといえます。しかし、他のブロックチェーンでは51%攻撃が発生しています。その中には、1,800万ドル相当が盗まれた2018年のビットコインゴールドの事例も含まれています。
BCHブロックチェーンでは51%攻撃がまだ発生していませんが、発生を懸念する声が上がっています。2020年4月の直近のBCH半減期では、マイニング業者の報酬が12.5 BCHから6.25 BCHに減少しました。これを受けて、マイニング業者はより収益性の高い仮想通貨へと一斉に移動し、BCHネットワークのハッシュレートは大幅に低下しました。その結果、51%攻撃を開始するコストは大幅に低下しました(1ステージで1時間あたり10,000ドル未満)。幸いにも、51%攻撃はまだ起こっていませんが、BCHコミュニティではセキュリティに関する疑念が生じており、今も解消されていません。
BCHが成功したかどうかについて、少し皮肉を込めて語ってきましたが、成功した分野もあったのでしょうか?
決済手段としての利用
BCHは、シームレスで効率的な決済を目的として考案されており、近年この分野でいくつかの成功を収めています。たとえば、2020年10月にPayPalの仮想通貨リストに採用されました(それ以外の採用銘柄はBTC、イーサリアム、ライトコイン)。これはBCHの地位向上をはっきりと示す事例といえます。PayPal利用者は、BCHで商品を売買できるようになったのです。2020年2月の推計では、世界中の4,300店でBCHを利用可能になっています(今後さらに増える見込みです)。
ビットコインキャッシュの価格履歴
BCHは2017年8月に240ドルでローンチされました。これは有名な仮想通貨急騰と同じタイミングでした。そのため、BCH価格は急上昇し、2017年12月20日に4,355ドルの最高値を記録しました。2018年前半には、多くの仮想通貨と同じく、BCHも重大な調整局面に入ります。同年2月までに800ドルを下回る水準に下落しましたが、5月までには1,600ドル超に回復しました。しかし、BCHコミュニティにおける内紛が激化した結果(ビットコインSVによるハードフォークという形で終結)、BCH価格は暴落しました。2018年12月には過去最低値の75ドルを記録しています。
それ以降のBCH価格は比較的安定しており、2019年1月から2021年1月にかけては100~500ドルのレンジ相場となりました。半減期も価格にそれほど影響を与えなかったようです。ただし、2021年1月には、BTC価格の急騰に連れ高となり、1月10日には過去2年以上の最高値である600ドルを突破しました。現在(2021年3月下旬)の上昇局面では、2021年2月中旬に716ドルの高値を記録しましたが、その後は500~550ドルのレンジ相場が続いています。
ビットコインキャッシュは優良な投資対象か?
この質問をする人が具体的に知りたいことは、「投資に見合う十分な利益が得られるのか?」でしょう。以下で、今後数年間のBCH価格に関するアナリスト予想をご紹介します。
ビットコインキャッシュの価格予測
Prime XBTは、BCHが2025年までに3,600ドル近辺に達するという強気の予想を行っています。
Digital Coin Priceはそこまで楽観的ではありませんが、かなり強気です。2025年までにBCHが1,500ドルを超える可能性があると予想しています。
Wallet Investorは、BCH価格は比較的落ち着いて推移し、2025年には615ドル前後になると予測しています。
Long Forecastは悲観的です。BCH価格は2025年までに下落し、350ドル前後になると予測しています。
このように、BCHの価格見通しはまちまちですが、Bybitの予想を以下で説明します。
おわりに
仮想通貨が成功するか否かはBTCに大きく依存しており、BCHも例外ではありません。しかも、BCHは、BTCとの価格相関が特に強いアルトコインとして知られています。したがって、BTCが上昇すればBCHも上がり、BTCが下落すればBCHも下がると考えられます。BCHは、BTCのアップグレード版と称されていたにもかかわらず、今後も常にBTCの陰に隠れる可能性が高いでしょう。その原因は「BTCではない」からです。おそらく、あらゆるアルトコインが、この単純な原因でBTCの陰に隠れ続けるでしょう。そもそも、BTCの人気が高いのは、世界初かつ最も有名な仮想通貨であるという理由なのです。
投資家の関心の大部分はそこにあり、機関投資家の投資もそれに基づいています。この傾向は、今後も変わらないでしょう。BCHコミュニティにおける党派分裂も、足を引っ張りました。しかし、決済用の通貨として見れば、取引時間が短くブロックサイズが大きいというBCHの特長は、BTCよりも間違いなく優れています。そのため、BCHの普及が進み、仮想通貨を価値貯蔵手段ではなく決済手段と考える人が増えれば、BCHの見通しは明るくなる可能性があります。したがって、Bybitは長期投資対象としてのBCHには大いに強気です。
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